顕微鏡とマイクロスコープ

大学の後輩のKがまたいっしょに飲みましょう、という
ので行ってきた。この前、会ったときに「イノベーシ
ョンのジレンマ」を紹介したのだが、それをベースに
ディスカッションしたい、とのことだった。


Kは元々大手の計測機器メーカーで営業をやっていて、
それをやめて今は実家の会社で働いている。


さて、そんな彼が前職でのイノベーションのジレンマ
の事例を教えてくれた。


それは顕微鏡とマイクロスコープだ。顕微鏡メーカー
オリンパスニコンで、マイクロスコープのメーカ
ーはキーエンスオムロンだ。技術の性能の軸は解像
度である。基本的に顕微鏡は研究所などで使われてい
たのだが、それに対してまったく解像度は低いが、画
面が大きく、複数人で対象を見ることができるのだ。
従って当初研究所用途としては性能は不十分だったの
だが、それを買ってくれたのが、メーカーのQAの部門
だったそうだ。不良の解析などを行う際に、解像度よ
りも複数人でそれを見ながらディスカッションできる
というニーズをとらえたのだ。そこから性能をどんど
んと上げていき、今では顕微鏡と同等の性能がある。
顕微鏡メーカーは顕微鏡にデジカメをつけて対応しよ
うとしたのだが、それもうまくマッチングができてお
らず評判は悪かったのだ。その間にどんどんとマイク
ロスコープが顕微鏡市場を奪っていった。


別の事例としてSEMと卓上SEMもそうだという。元々、
一部屋ぐらいの大きさだったSEMを卓上で使えるように
したのだ。もちろん、それによって解像度は落ちるが
その使い安さがユーザに受け入れられ、大ヒット商品
になったのだという。


いずれの例も、「こんだけの性能で十分だからこうし
てほしい」というユーザのニーズを掴めたからこそで
きた事例ではないだろうか。


しかし、こうして、本を読んで、自分ではこう解釈し
て、しかも自分の経験ではこんなのもあるけど、どう
でしょう、なんて持ってくるあたりはさすがだと思っ
た。僕自身もそういう姿勢をもっと持たないとダメだ
と思う。


他にもいろいろと楽しい話ができてよかった。