リバース・イノベーション

まだ読み終わってないのだが、「途上国に特有の顧客ニーズから始
めて、必要なソリューションを編み出し、それを市場へと戻す、マ
ーケット・バックのやり方が必要」、「LGT(ローカル・グロー
ス・チーム)を作ること」などはその通りである。また、成功事例
として、GEの小型超音波診断装置(中国)、外科用Cアーム(イ
ンド)をあげている。


リバース・イノベーションの一つの鍵は、「15%の価格で50%の性能
を提供すること」である。GEをリバース・イノベーションの成功
例として捉えるのは正しいが、その前提をきちんと理解しておかな
いと、GEのマネをしようと思ってもうまくいくわけがない。


おそらく多くの人は気づかないだろうが、必ず知っておかなければ
いけないことは、GEの立ち位置である。大前提として、GEの事
業立地は、「中国企業がやれない分野」、「グローバルシェア1位
か2位」という事業というところにシフトされており、その立地に
立った上で、GEはこうしたアプローチをとっているということで
ある。大前提であるGEの立ち位置を読み違えるべきではない。


つまり、GEが扱う事業の多くは、「基本的に価格が高い」、「中
国製品に荒らされていない」ものである。こういう立ち位置があっ
たからこそ上記のようなリバース・イノベーションができたのであ
ろう。


一方で、コモディティ事業である場合は話が変わってくると思う。
既に市場が中国の格安品で溢れていたり、ローカル企業が十分にニ
ーズを満たす商品を提供している事業であった場合は、単純にリバ
ース・イノベーションのアプローチは通用しないはずだ。


自社がそういう事業領域にいる場合、アプローチは2つだと思う。
1つは、コモディティ領域内でのリバース・イノベーションに対し
て異なるアプローチを考えること、もう1つは、そうした事業領域
であってもセグメントを捉え直して、リバース・イノベーション
効果的になるセグメントを見つけることだろう。


いずれにしても、リバース・イノベーションは、低価格商品を提供
することではなく、「顧客ニーズに迫ること」にあることは言うま
でもない。

 ザッポス伝説

だいぶ前に買っておきながら読めていなかった、「ザッポス伝説」
を読んだ。
ビジネスの気づきとして、一番大きいのは、「なぜ、アマゾンとい
ジャイアントがいる中で、ザッポスが勝ち得たのか」ということ
だ。オンラインビジネスでアマゾンには圧倒的な強者である。でも
、どこに死角があったかというと、それは「靴への特化」であるは
ずだ。
総合的なオンラインビジネスのサービスとして、アマゾンのサービ
スが優れていることは言うまでもない。ましてや、「本」のオンラ
インショッピングに関しては言うまでもないだろう。ただ、それが
どの商品にとってもエクセレントか、というとそうではないはずだ
。本には本の売り方があるし、食べ物には食べ物の売り方があるし
、薬には薬の売り方がある。アマゾンが総合化すればするほど、何
かのセグメントに特化すれば、アマゾンよりも優れたサービスを提
供できる可能性があるということをザッポスは示したのだと思う。
実際に、ザッポスのサイトを訪れたが、靴のサイズや色など、「靴
を買う」というプロセスを考えれば、エクセレントなサービスだと
感じることができる。もちろん、ザッポスはそれだけではないのが
特徴だが。
それを考えれば、とある商材に特化したオンラインビジネスという
のはありえるはずだ。


別途、ザッポスの初期の話はとても印象的だ。そもそも、誰もが、
「靴をネットで買う人なんていない」と思うのは当然だ。それを、
初期のメンバーが、「ネットで靴を買う人がいる」ということを証
明したのがまず何よりも大きかったのだと思う。それが、ニッチの
ままのビジネスなのか、それとも拡大する可能性があるものなのか
、それを見極めたのは大きいと思う。


最後に、「ライバルに圧倒されずにいられる唯一の理由は、私たち
が取り組んでいることが難しいことであり、私たちは誰よりもそれ
をうまく行っているからなのです。」とあるか、これはまさにビジ
ネスの本質を指していると思う。そもそも、簡単なことをやってい
たら、他社に勝てるわけなんてない。難しいことにチャレンジし、
それをうまくこなせているからこそ、他社に勝てるのだ。ビジネス
とは、難しいものでなくてはならない、というのはビジネスの本質
だと思う。自社を振り返ってどうだろうか、多くの場面で、チャレ
ンジよりも易きに流れる場面のが多いのではないだろうか。それを
「難しいこと」に縛ることこそが経営者の役割だと思う。

 組織のカルチャー

昨日に引き続き、今度は別の人事の方が出張で来られたので
そのアテンドもあって話す機会をいただいた。


その方も所属される組織の問題を非常によくり理解されてお
り、自分の問題意識を共有できる部分も多々あった。


その組織のトップは、やはり子分にポジションを禅譲したい
ようだが、予想通りだったが、やはり残念だ。やはり自分に
擦り寄ってくる人間がかわいい、と思うのは人間の性なのだ
ろう。子分さんは自分がそうしてきたから、自分の部下にも
同じようなことを求めて、王国を作ろうとしている。その子
分さんがトップに立てば、しばらくはその体制が続くという
ことだろう。海外で働く限り、その組織との関与は避けられ
ないわけであり、かなり悩ましいところだ。


結局、そういうカルチャーが異論や反論を生み出せないよう
にしており、その結果、案件の失敗などにつながっているの
だろう。こういうカルチャーを変えていく、というのは大き
な課題の1つだろう。


別途、非常にクレバーに論理的に考えられる方もいるのだが
、年齢的に難しいようである。でも、その人事の方の見立て
と自分の見方も共通していた点は嬉しかった。

 人事のTさんの観察眼

出張者のアテンドもあり、人事のTさんと話す機会を持つこ
とができた。もちろん、Tさん自身もいろいろと考えている
こともあるが、基本的には、フランクに思っていることをス
トレートに話す姿勢は非常に好感が持てた。


また、まだ来て日が浅いもののとてもよく人を観察されてい
る。とある方のプライドの高さなどは、自分が感じていたも
のと共感するところで驚いた。また、Oさんのおかれている
境遇なども非常によく考えられていた。


「人財がいない」と言っていたが、同時に、人を処遇するた
めのポストもない。Tさんのスクリーニング基準が高いのは
それに越したことはないが、じゃーどう人が育つ環境を作る
のか、というのはもう1つの課題だと思う。


人をよくわかっておられるし、会社の事情もよくり理解され
ている。特に社内政治の内実などはサラリーマンとしてのリ
アリティだと思うし、それを理解せずして、大企業の中で自
己実現などできないというのもその通りだろう。


ただ、1点違和感を覚えるとしたら、「人の話」、「社内政
治の話」ばかり、つまり内向きの話ばかりである。「あの人
が上に行けば...」というのは会社をよくするための1つの考
え方が、それ以上に重要なのは、戦略そのものである。「顧
客価値を生み出す話」や「戦略の話」そこにこそ本質的な企
業の価値があると僕は思う。「会社は人だ」というのはその
通りだと思う。でも、一方で、戦略がないままに、人だけ変
えたところで何も変わらない。重要なのは、構想力を持ち、
戦略を打ち出せる人財が必要ということであるはずだ。

 雇用条件の交渉

一旦会社をやめて、リアルに現地の子会社で働いてみる、と
いうことを考えてみた。とりあえずの蓄えはあるし、幸いな
ことに奥さんも働いているわけなので、2〜3年だったら、
それでも特に問題はないと思っている。


ただ、そうはいっても、現地の会社で、年収100万Rsと
いうのは少ししんどいと思う。そこで、自分の市場価値に合
わせて雇用条件を交渉することになる。車が欲しいとか住居
手当てをどうするか、ということだ。


通常、日本から出向した場合、主事ならマネージャー、参事
ならGMというようにステータスによって現地でどのポジシ
ョンにつくかということが決まってくる。それを飛び越える
ということはあまりない。


しかし、現地雇用となった場合は、現地の会社がそれを判断
すればいい。仮に、20代や30代であっても、その社長が
その人の価値を判断すれば、GMや取締役として雇用しても
よいわけだ。


雇用というのは本来そういうものではないだろうか。年齢に
関わらず、市場価値に照らし合わせた上で、条件交渉を行い
、然るべき仕事ならびにポジションを獲得していくことだ。


もちろん、日本でももはや年功序列は崩壊しているが、それ
でも大企業の中の人事制度に組み込まれていると、市場価値
に照らした上での条件交渉というリアルな感覚はなくなって
いくと思う。


転職をすることが必ずしも是であるとは言わないが、市場に
照らした上での自分の価値というのを、敢えて考えるように
しなけえば、それは実際の市場価値とどんどん乖離していっ
てしまうのではないだろうか。

 株主資本とはどういうことか

日曜日なのだが、とあるサプライヤーを訪問その帰りに、Rさ
んの家に遊びにいき、そこでいろいろな話をした。Rさんのス
キルとかからしたら、会社をやめて独立したほうがよっぽど面
白いと思うし、需要もあるなんて話をしていた。


Rさん自身は、会社を立ち上げればやれる自信はあるが、そん
な開業資金はない、と言ってた。なので、インベストメントと
して、僕の初期費用として出してもいいよ、と言った。もちろ
ん、彼が本気でそうするなら、実際に出資してもいいと思って
いる。


さて、その後、ふと考えたのだが、例えば、僕が1,000万
円を出資したとする。しばらくすると、彼は、人が足りないと
いって、自分の兄弟を雇い、その後、彼の従兄弟を雇い、さら
に、彼の友人を雇う。
彼自身は一生懸命働いて売上げは上がっているのだが、利益は
いっこうにでない状況が続く。そのコストの大半は人件費とな
っている。しかし、たまにオフィスを覗いても、その雇ってい
る人たちはまったく仕事もしておらず遊んでいる状況だ。そん
な状況なので、もちろん配当など出るわけもない。


こんな状況になったらどうだろうか。「働いているかどうかも
わからないような親戚連中をどうにかしてくれ」と言うはずだ
。出資している立場からしたら当たり前である。ましてや、「
そんな遊んでいるような親戚連中のことなんて知らん」という
のではないだろうか。


これとまったく同じことが起きているのが日本の企業ではない
だろうか。従業員互助会と化した会社は、付加価値を出さない
従業員たちを抱えながら、低収益にあえでいる。


株主の立場からしたら、ありえない状態ではないだろうか。


実際に身銭をきって、かなりの出資するかも、ということが頭
によぎったことにより、株主資本というのがどういうことなの
か、ということを少しリアルに感じることができた。

 プロフェッショナルとの仕事

今週は、仕事の関係で、プロフェッショナルな方々と話をする
機会があったのだが、非常に楽しかった。専門知識に富んでお
り、設計の背景にどういうロジックがあるか、ということにつ
いても極めてクリアに説明してくれた。また、これは個人差は
あるとは思うが、それでも、人間としても、非常に真摯であり
、サポーティブな態度も好意を持てた。プロフェッショナルと
しての興味で動いており、何が自分のやるべき仕事で、何がそ
うでないか、ということもきちんとわかっている。


正直、こういう人たちにリクエストに応え、認められるような
商品を作りたい、と思った。こういう顧客に応えたい、という
のはビジネスを行っていくうえでの基本的なモチベーションに
なるんだと思う。


値段で買い叩かれて、商品を右から左へ流すようなビジネスと
はまったく性質の異なるものである。営業をしていても、自分
の知識やスキルを高めたいと思うようになるし、面白さもまっ
たく異なってくる。


業界としては、まだまだ小さな分野ではあるが、そうしたプロ
フェッショナルたちといっしょになって、インドにおける業界
を創っていく、というのはワクワクする仕事だと思う。