所長の話

月1回、研究所全体で集まる昼会があった。各月の業績
と毎月1研究室ずつ、研究室の紹介みたいなことを行う



その中で、Fさんが次のようなことを言っていた。「こ
のような経済情勢だから、あえて普段できないような
とをやろう。例えば、競合分析とか、パテントマップ
なんか、普段テーマを推進していると、どうしても、
中途半端になりがちだが、そういうのをこういときに
整備しよう。特にパテントなんかは、よく考えてやっ
てください。どんなにいいものを作っても、結局、海
外で抜け漏れなんかがあったら、国内でしか販売でき
ません、なんてことにもなる。今後、国内市場が伸び
ないのは明らかなので、それこそグローバルに市場を
とれないような事業は成り立たない。さらにその中で
も利益を出していけるのはグローバルでシェアが1位か
2位だけだろう。結局は規模の経済なんだ。そういうこ
とを我々としてはやっていかないといけない。」


まずここで疑問は4つだ。


(1) かつて研究所発でそういう成功例があったか。
「ない」というのであれば、今までのやり方ではまず
いということ。過去の延長でそれは為しえないという
ことでは。


(2) 今のテーマにそのポテンシャルはあるか。
そういう視点でもって事業をやるとして、じゃー果た
して今の研究テーマにそれがあるだろうか。本気でそ
う思うんだったら毎月の検討会でこう聞くべきじゃな
いのか。「このテーマはグローバルでシェア1位にな
るポテンシャルがある研究ですか?」と。そして、そ
の答えがイエスでないのなら、やめないといけない。
そうじゃなかったらただの絵空事にしかならない。


(3) 今現在はどうなのか。
で、現状でグローバルシェアを握っている事業がどれ
だけあるだろうか。国内のシェアばから外部には強調
しているが、結局、それが社員のマインドにもつなが
ってしまっている。要はグローバルシェアを全商品出
したときに、果たしてどうなのか、現実を知るべきだ
。現実を知ることから全ては始まる。


(4) シェアをどう定義するか
結局、「シェア」と一言で言ってもその母数をどう捉
えるかでいかようにでも表すことができる。例えば、
アルコール飲料市場でのシェア、なのか、それとも、
マッコリというニッチ市場でのシェアなのか。そうい
うことだ。何をやるにしても、ゴールのあるべき姿を
きちんと定義しなければ、後で言い訳がましい成果ば
かりを主張する人がいっぱいでてきてしまう。


(5) 戦略の展開!?
これが一番の問題だ。今までニッチ戦略として取り組
んできたのにも関わらず、これは矛盾する。グローバ
ルで1位or2位になり、規模の経済を追うというのは、
パワープレーを行うということだ。決してニッチ戦略
ではない。もうこの時点で戦略の一貫性がないことが
よくわかる。まぁ、シェアのありかたも、さっきふれ
たが、どう定義するか、というところにもよるのだが
。でも、その具体例を示さない限りは決して何も社員
には伝わらないだろう。グローバルにシェアを取れる
ポテンシャルのある研究とニッチな顧客ニーズに答え
ていく研究というのはまったくそのスタンスは異なっ
てくるはずだ。そういう整理の仕方をまずはしてみた
らいいんじゃないかしら。


僕自身がシニカルなものの見方をしているか。決して
そうではないと思うのだが。でも、Fさんという人に
至ってもこういう一貫性のない発言をしてしまう、と
いうのは残念だ。