掃除機道

この前、ダイソンについてちょっと書いたが、その後
「逆風野郎!ダイソン成功物語」を読んでみた。


とてもじゃないが半端じゃない逆境の連続だった。仲
間の裏切りから、大企業のありえない態度、訴訟の連
続、借金、etc...。例えば、「やる前からその状況が
わかっていたとして、成功の確率は50%。もしかした
らダイソンのような成功が収められるけど、もしかし
たら膨大な借金が残るだけかもしれない。」そう言わ
れたときに、たぶん普通の人間はNOと答えるだろう。
結局、自分自身が信じれない限りその道を歩くことは
できない。そういうことなんだと思う。そして、ダイ
ソン自信が常に信じていたのは、「紙パックの掃除機
と違って吸引力が変わらない」というそのコンセプト
一点だった。それにしても、掃除機を作ったというこ
と以上に、その困難を乗り越えたという事実のほうが
本当にすごいと思った。


それと、マーケティング偏重の考えを否定するスタン
スは共感が持てた。次のようにある。「投資のゆがみ
は、いま広告にある。かりに広告に百万ポンドかけた
ら、収益はたちまち上がる。ところが、同じ金額を研
究開発に費やしても、成果が現れるまで、もし一つで
も成果が現れることがあるとしても、十年はかかるか
もしれない。当然、誰もが広告に走り、奨励されるま
でもなく未来永劫そうし続けるだろう。そして英国は
瓦解する。」
前の事業部でとにかく、TVCM、新聞広告、そういった
ものに膨大な投資をしていたのを思い出す。しかも、
その結果はなんともおそまつだったことも。


会話の重要性。「創造には会話が必要なんだ。創造的
な仕事をしている連中のなかで、創造性について一番
騒ぎ立てるのは広告業界じゃないか。なのに、ほら、
まったく創造的じゃないんだから。ダイソン社のデザ
イナー

「人は一度に一つの新製品、一つの新しいアイディア
しか理解できないからね。」この考えも面白い。うち
のなんか、ある商品で同時に同じようなのを3種類も
出した。あらゆるニーズへの対応といえば聞こえはい
いが、お店に並んでいるものを見ても違いがまったく
わからない。こういうものを大真面目で売れると、言
っているところが理解しがたい。本当は売れないとわ
かっているけど、売れると言わないと仕事にならない
と言っているとしか思えない。でも、よく話を聞いて
も必ずしもそういうわけではないんだよなぁ。


「そんなにいい掃除機なら、なぜフーバーはやらない
のか?」この質問には注意だ。


「ダイソン流」経営哲学。
新入社員は必ず全員、入社初日に掃除機を作る。
進歩の基本原則は会話。人は話しかけられれば、耳を
傾ける。独り言は執着につながるだけだ。頭が優秀で
なくても、常識にとらわれない柔軟な発想と意思の強
さがあれば頭がいいのと同じくらい問題を解決できる
可能性はある。もし型破りになれないなら、愚鈍にな
れ。わざと愚鈍になるんだ。なぜなら世界には五十億
の人々が決まりきった方法で、数えられた通りのこと
を考えているのだから。


とにかく何度も失敗しているけど、重要なのはコンセ
プトの失敗はないということだ。コンセプトを具現化
するプロセスにおいて、もしくは販売方法、などの失
敗はあるがコンセプト自体は間違っていないというこ
だ。コンセプトが間違っていたら後も全て間違う。で
もコンセプトさえ合っていれば、後でどんなに困難が
あったとしても、それを乗り越えることができる。


「紙パックは目詰まりするが、ダイソンは吸引力が
落ちない。」この強力なコンセプトが必要なのだ。