ナチュラルシンキング
HBR3月号の東大EMPの横山氏の記事の中にナチュラルシ
ンキングという言葉があった。以下抜粋。
いまの時代において課題設定がいかに重要であるかが
わかるはずである。これができる人格はどのようなも
のだろうか。それを「課題形成能力のある人格」-設
定ではなく「形成」である-すなわち「アジェンダ・シ
ェイピング・リーダーシップ」と呼ぶ。
それは、優秀だが、孤高の人格ではなく、人を巻き込
み、動かし、必要ならば説得しながら、まったく新し
い視点からの課題を広く認知させていく実際的な人格
である。
このような人格に最も必要なものは何だろうか。それ
は「ナチュラル・シンキング」であり、また自分が「
私は何を知らないかを知らない」("I don't know what
I don't know")という状況にあることに気がついてい
るという、謙虚さではないかと思う。
ナチュラル・シンキングというのはまったくの和製英
語である。「素直に自然に考えること」という意味で
使っている。思いをめぐらせてみると、そういう人格
の持ち主は、それほど多くないことに気がつくだろう
。我々は、そのように考えることができるような環境
に生活してないからだ。
だれしもが自分の過去の歴史を背負いながら、現在の
組織にあるもろもろのしがらみのなかにいるのが普通
であり、これまで意識しないまま育ててしまった偏見
、そこから派生する視野狭窄、出世欲と裏腹の権威へ
の依存心、属している組織の持っているタブーなどが
影響し、素直に自然に考えることがなかなかできない
。
また、そのような思考を表立ってすると、組織のなか
で生き延びていけないとも思っている。素直に自然に
考えて発言すると、わけ知り顔の先達が親切にその青
臭さと危うさをたしなめてくれるのが普通である。我
々はそのような環境で生活しているのであり、したが
ってナチュラル・シンキングは度胸がいる。
しかし、賢い立ち回り方を覚えながらも、素直に自然
に考えられる人物が出てくるものだ。そのような人に
は、アジェンダ・シェイピング・リーダーシップを発
揮できる可能性がある。ただし、気をつけるべきこと
もある。無知だからこそ雑念がなく、自然に考えられ
るというわけではない。
略
最近、リーダーシップ論が盛んである。しかし言うま
でもなく、リーダーの属性を吟味して理解してみても
、それによって、だれもがリーダーになれるわけでは
ない。リーダーとしての資質は生まれつきのものでは
ないだろうが、人生に比較的早いうちに形成されてし
まうものであるようだ。プロの音楽家になれるかどう
かは数歳で決まるらしいが、10代から20代の初め
にリーダーを経験し、その時期に人をリードしていく
基本的な資質は出来上がってしまうのではないだろう
か。
「ナチュラル・シンキング」は「素直な心」、「とら
われない心」、「悪意を持つな」、これらを言い換え
た言い方だといえる。余計なしがらみにとらわれても
のごとを考える危険性については、Tさんが、「とら
われない心」を説明してくださったときに、おっしゃ
られていたことだ。つまり、出世とか部署の利益とか
そういうものにとらわれずにモノゴトを考えないとい
けないということなのだ。その当時学生だった僕は、
そんなの当たり前のことじゃないか、と考えていた。
でも、実際に働いてみるとそういうのがいかに多いか
ということがとてもよくわかる。これこそまさしく、
サラリーマンでないと肌で経験できないこと、といえ
るのではなかろうか。