未来のプロジェクト

社内で未来のプロジェクトなるものが動いている。いろいろなアイデア
を出して、それを社内SNS上で、評価をしてトップ10に入ると表彰される
というものだ。


一生懸命取り組まれている方がたくさんいるが、どうも出てくるアイデ
アを見ると、そもそも人前に出す以前のような気もするのだが、やって
いる人は大真面目である。○○ランドみたいなテーマパークとかの案も
ある。信じられない...。また、そこに大真面目に否定的なコメントを
出す人もいる。戦略が...、ビジネスモデルが...、リッチが...、とか。


やってみたら面白いと思うのだが、数十万にいる社員のうちにいったい
何%の人がこれに取り組んでいたのか、これを分析したら面白そうだ。
「社員の総力で」みたいになってみたら、フタを開けたら、ごくごく一
部のまぁ暇な社員が熱中している、という結果にならないだろうか。そ
んな分析こそしてみたら面白い。


それにしても、もう1つ思うのは、あまりにも自社が理想会社であるか
のようなアイデアが目立つ。社会に貢献してとか、自社の社員教育から
大学を作ってとか、理念やら、ブランドやら。環境への取組みとか。
なんていうのか、2年連続で大赤字を出している時点で、そもそも会社
の仕組み自体が腐っているからこうなっている、ということに気づかな
い人が多い。会社が変化できない、というのは、それは自己否定できな
いことによるものだろう。これだけダメな会社になっているのに自己肯
定感の強い会社というのはある意味素晴らしいのかも。


で、本題だが、この取組みの何が問題か、という根本的なところである
。制約条件を「10年以内に実現できるビジネス」としているところであ
る。これが一番の問題なのだ。そもそも、「10年先の事業」なんていっ
ても、10年先なんていうのは、あまりに不確実すぎて、何の制約にもな
っていないのだ。この制約っていうのは、せいぜい「宇宙人と交信する
電話機、これはダメですよ」というぐらいのものであって、何も制約し
ていない。そもそも、10年前に既存の事業の今の姿すら誰も想像できて
いないわけで、10年というスパンに視野を広げることはまったく意味が
ない。


そこで思ったのだが、だから、「技術」なのだ。長期的に取り組まなけ
ればならないのは、事業ではなく、技術である。結局、10年後のビジネ
スの絵を描いたところで、不確実なのだ。一方で、その環境変化に対応
させるべきものが技術である。つまり、事業環境の変化が起こったにし
ても、技術はそれに対応させればよい。逆に言えば、技術はそのぐらい
のスパンで考えなければいけないものだ、ともいえる。もちろん、どう
いう技術に取り組まなければならないか、ということを考えるのにビジ
ネスを考えることも必要だ。でも、そこで言うビジネスは大きなダイレ
クションであり、個別の事業までは考える必要はない。長期的投資に耐
えられるのは個別事業ではなく技術なのである。


さらに言えば、長期的投資に耐えられる技術というのは、バイオ、マテ
リアル、デバイスといったところではないだろうか。ICTなんかは、そ
ういう取組みとはまた違う取組みになって然るべきと思う。


そこに今回の取組みのミスマッチがあるのだ。誰も指摘しないけど。