グロービス講演(コマツ 坂根氏)

グロービスの講演会でコマツの坂根氏の話を聞いてき
た。どーもグロービスは話す人によって人の入りがだ
いぶ変わるような気がする。ライフネットの岩瀬氏や
ボストンコンサルティングの水越氏のときはあふれる
ぐらい人が入っていたが、今回の坂根氏もそうだが、
やライフネットの出口氏のときなんかもあまり人は入
っていなかった。圧倒的に後者の人のほうが話として
はためになるのだが。


さて、以下内容だ。うまくまとめられないので、メモ
のままに書いていく。


○ 挨拶
コマツは売上海外の国内比率15%のグローバル化した企
業、そして坂根氏は2001年に社長、2007年に会長、200
8年にデミング賞(会社として)を受賞。昨年51回の講演
会。今年も週1回のペース。もちネタは1つだが、話は
アップデートしている。ぜひ会社のトップに聞いて欲し
いのだが、会社のトップで人に聞いて学ぼうとする人は
珍しい。


→ これはまさに最初に感じたこと。最初に会場に入っ
て今日は参加者が少ないことを感じた。ましてや、こ
の地域でこんな値段で坂根氏の話を聞けることなんて
いうのにはないのにも関わらず、少なくとも自社の経
営層と呼ばれるような人は誰もいなかった。金曜日の
夜のたった2時間その時間さえ確保できればこんなに
勉強になる話が聞けるのに...。でも、坂根氏がいう
ように会社のトップの人が人に聞いて学ぼうとしない
っていうのがまさにそうなんかもしれない。




知行合一
行動が伴って初めて身につく。まずは行動から入る。
あるところで、自分は何しているか整理した。社長を
ひきついだときもそうだった。あるところで、一度、
整理してみると、自分が何をしているか、ということ
に気付く。やったことを理論化した。


○ 入社の頃
入社は1963年。建機は外資に守られていたのだが、外
資を受け入れるとなった。自動車と電機は守りたい、
というのが国の思いだったが、建機はそうではなかっ
た。キャタピラーが参入してきたのだが、どこと組む
かということで、当初はコマツも手をあげたのだが、
結局は三菱重工といっしょになった。


○ 仕事の経歴
ブルドーザーの設計、クレーム担当(ブルドーザーの
クレーム対応がうまかったから)、品質改善活動、
商品企画の課長、新事業企画室(建機だけではやばい
という危機感から新事業進出が盛んに言われた)、工
場建設。


○ 世界同時不況
みんな突然トンネルに入った。トンネルの手前で減速
した会社はまし。大半は全速力でトンネルに入ってい
った。そして入ってみるとレールがひ弱で脱線したり
した。コマツは2001年からの構造改革でレールがしっ
かりしている、だから、思いっきり減速しようと言っ
ている。そして、増速できるように準備しよう。


コマツ
今年88歳。連結2兆217億円の売上。営業利益は1519億
円。2007年度は営業利益3000億円。従業員4万人の半
分が外国人。売上の9割が建機。世界のどの地域でも
まんべんなくバランスよくビジネスをやっているとす
ればコマツが一番だろう。欧米、アジア、中南米、ア
フリカ。ダンプトラックは1台5億円。鉱山はそれを
まとめて10台買う。海外では300トンが主流。あと
は自動車のボディを作るプレスは世界一のシェア。ト
ヨタもつ勝っている。半導体製造装置のステッパーと
いうものはウシオ電機といっしょにやっている。


○ 会長
会長はヒマ。会長はいっさい口を出さないことになっ
ているから口を出さない。だから、CSRをやっている
。柔道の谷本あゆみ。地雷処理機。世界に1億の地雷
が埋まっている。コマツの建機は地雷除去に向いてい
る。ODAでこれをやるとわかりやすい。ビジネスにな
らないが、国・世界の社会貢献となるならヤル気にな
る。ODAも見えるODAにすべき。


○ 世界の動き
建設機械の地域別の情報。
1973年は原油高、でもこれは資源少によるものではな
く、カルテルによるものだった。欧米、日本、アジア
、その他国、とした場合、その他国は原油高になると
元気になる。資源国だから。20世紀は日米欧の15
%の人が残りの80%の資源を使って成長してきた。
80年代に経済が限界になると、アメリカは90年代
にITバブルを起こし、ITバブルの後は、住宅バブルを
起こした。欧州は東欧などに実質マーケットを拡大し
て経済を成長させた。欧州のやり方が一番まっとうな
やり方なのかもしれない。日本はもう経済が限界に達
している。
日本は逆に言えば、510兆円のGDPによくなったなぁ
という感じ。内需だけでは40兆円くらいの国にしか
ならない。
アメリカもEUも同じ。バブルを起こさざるをえない。
だから、建機の売上比率の経時変化を見たときに、「
その他」の割合が膨らんでいる。
お金があまるとバブルを起こさざるをえない。21世
紀の変化はその他世界160カ国のカネが入って、そ
れがまわりはじめている。
中国がいい例。日米欧の経済成長はもうない。
中国は03年〜04年でその割合が落ちているが、こ
のとき、バブルの予兆があったから政府が引き締めに
入った。バブル退治をした。中国は昨年もどった。た
だ中国がバブルといってもそれは日本の60年代と同
じようなもの。日本の60年代の頃の高度成長期のバ
ブルなんてしれいている。中国は多少バブルがあって
も心配するものじゃない。


○ 将来予測
まちがいなく起きることが2つ。
?人工が増える
現在、60億人→90億人になる。
伸びるのはインドとアフリカ。中国はいずれ減少する
。医療問題、格差問題が起きる。そして都市化が進展
する。
? 都市化がすすむ
世界の「都市」の定義は「5万人以上」。それなのに
日本の定義は「1hkmあたり4000人住んでいる
」という定義。世界の基準と違う。世界が5万人以上
というならその定義に合わせたほうが都合がよい。
世界の都市化が進む。みんな都市化といっている。都
市化すると社会経済の効率が高まる。インフラとか。
都市化率を高めて道路を作れば、無駄に作らない。人
のいない地方に道路うんぬん言っている日本は世界の
スタンダードからかけ離れている。
都市化が進むと電気と鉄が必要。電気の石炭、銅、鉄
、資源、食料、水、医療、それらが共通の課題。
20世紀は15%の人口が80%の人の資源を安く使
ってきた。それにインド、中国が加わったらどうなる
か。世界の6割、7割の人もゆたかにならないといけ
ない。資源高は必然のこと。


→ 親会社の社長はなんていうのはこれをわかっている
から、エコっていう方向へ思いっきり舵をきろうとし
ているのだろうか。


アメリ
アメリカのGDPと住宅着工件数は同じように動いている
。05年ピークに06年から急落した。ただし、そう
した急落は過去に3回ある。81年と91年。今回は
住宅着工の棒グラフとGDPの折れ線グラフの差が大きい
。明らかに金融バブルということが分かる。


構造改革の出発
01年の出発点。そのときの状況をどう思うか。
? 20世紀の日米欧の経済成長モデルは終わったとい
うのが認識。中国やインドなどのアジア諸国にロシアや
中近東などを加えたアジア大陸の広大な地域を指したグ
レーターアジアはこれから。
? 人口増+都市化が課題。
? 01年に赤字に陥ったのは競争力が落ちたからじゃ
ない。あれやろう、これやろうと子会社300作った
。他のコストで負けるなら、他のコストを徹底的に削
除した。


ものづくりで負けていないなら、ダントツ商品を作れ
。ただし、環境、IT、安全は他社に負けるな。


米欧を除けば、キャタピラーコマツは同じ売上。
アジアはコマツが強い。だから将来はコマツの時代。


→ 新事業作ろうと言うのがNさんと僕の思い。それが
自社の強みだと認識している。でも、一方で全部が成
功するわけではない。むしろその確率は低いかもしれ
ない。ちょうどTさんがいた頃が社内ベンチャーを作
ろうという全盛期だったのかもしれない。ただし、そ
うやって買収したり作ったりして収益のあがらない
子会社がどんどん積み重なったらどうなるだろう。そ
れが300にもなったらどうか。どっかでディシジョ
ンは必要だし、資源にも限りがある。


構造改革
強さの話をおいといて弱みの話をする人はダメ。
まずは強みが何なのか?


日本の製造業の強み。
? 連携
技術が複合化。ファナックのロボットなど。組み合わ
せでないと作れないもの。お互いの技術畑の違う人が
連携とらないとできないような技術。


? サプライヤーとの関係
1円でも安いところから買うっていうのはダメ。本当
に技術が必要になったときに助けてもらえない。


? 継続的な決め細やかさ


→ うちでバイオをやるっていう話は現実味を感じない
が、例えば、コマツGDP技術をやる、と言われれば、
それは将来的にも必要な技術というのがわかるから現
実味がある。


○ 弱みの話
「あなたのその仕事なんのためにやっている?」って
言ってみる。オフィスの人は見えない。それを見える
ようにしてあげる。経理の人は決算まとめるのが仕事
。決算を1日でも早くする。そのためにできることは
?社長にしかできないことは何かないか聞いてみた?
「決算がいつも遅い子会社ないのか?」「5社ほどあ
ります。」「そこには言っているのか?」「いつも言
っていますが。。。」「それでは私が直接言ってみよ
う。」と言って、その子会社の社長に電話をすると、
「自分ところだけが遅いなんていうのは初めて聞きま
した、早くします!」という。オフィス業務がいかに
ムダかということ。


構造改革で行ったこと
01年は赤字だった。
? 経営意の見える化。成長とコストを分ける。
? 強みを磨く。環境、IT、安全。
? リストラは1回で済ます。
弱みは固定費と非主力事業。ガバナンスが課題。


グローバル化
役員と夏にディスカッション。
多くの日本企業はグローバル化というのに無国籍化を
目指している。グローバル化といってもあくまで日本
がベース。
日本の強み、これがベースでこれを活かしながらグロ
ーバル化をしていかないと勝てない。
アメリカと同じ土俵、つまり、モジュール化やM&Aと
いったところで戦っても勝てるわけがない。
そのために何が大事か。
? トップは現場と離れない。現場と離れたことを言わ
ない。
? ミドルアップダウンが不可欠。課長がしっかりして
その上でトップダウンがあるべき。
? 部内外の連携。
? 人材の育成。


○ 固定費
R&D費は減らさない。間接費をキャタピラーと比較して
ベンチマーク。「固定費を下げたら利益出る」、これ
が出発点。300の子会社を110に減らした。日本
オンリーn製品はやめる。これからはグローバル。
シリコンウエハー、一時期、建機がやばいから、シリ
コン、化成品を買った。これは信越化学と同じだった
。これも売却した。いろんな技術をやっていたので、
必要な技術とそうでない技術を比較した。
日本の会社のコストは総原価でいう。アメリカであれ
ばコストといったら変動費。固定費を分ける。
エンジンと油圧は日本で作る。コスト競争力は日本VS
中国は同じ。だから負けない。
固定費、キャタピラーと並んだ。営業利益も上がった
。社内は「これでいけるぞ!」となった。


日本ではよくコマツトヨタの輸出企業だけではダメ
みたいなことを言うがこれは間違い。強みをきちんと
認識すべき。強みがあって初めてどこで勝負するかが
決まる。


→ うちもこういうときだからこそ、R&D費は減らさな
いとか、メリハリのメッセージを出したらいいのに。
それだけでもモチベーションは高まるのに、来るのは
一律の費用削減ばかり。間接費のベンチマークなんて
ないだろうな。


ダントツ商品GPS
世界で14万台。GPS見える化している。
エンジンが動いているか、何時間動いているか、正常
かどうか、稼働時間、盗難も分かる。
今は世界中の稼動時間が増えたかどうかもわかる。
03年、中国がストップした。
そして工場の生産をすぐに止めた。
半年後、キャタピラーは2000台の在庫。
コマツは大丈夫だった。
今回は不況でも中国の建機は止まっていない。つまり
、お金は止まったけど、仕事は止まっていない、とい
う状態。
チリ、オーストラリアは無人ダンプトラックが動いて
いる。海抜3000メートルで、運転手の家族もきた
りすると、家を作ったり、インフラ整えたりいろいろ
しないといけないから、それもコストになる。
1時間グルグル回るから、眼が回って転落事故にもつ
ながる。長年このニーズは言われていた。


うちには果たしてこういうニーズはないだろうか。
それを作る、っていうのが技術ロードマップになるの
ではないだろうか。


○ 環境
今のようにここまで厳しくなるとは思わなかった。
でも、コマツでは世界初のハイブリッドを作った。
ハイブリッドに関して言えば、日本より中国とかのが
商品として向いていると思う。それなのに、日本企業
は「中国は安物を出さないと」とよくいう。
そうじゃない。中国の人も儲かるものがほしい。
日本ではオペレータの人件費が550万円、燃料費が
120万円。中国では人件費は50万円、燃料費は2
50万円。つまり、中国ではオペレータを上回るコス
トダウンにつながる。
車もハイブリッドは中国が欲しがるだろう。


→ うちなんかはまさにその発想。中国は安物出さない
と、と思っている。もちろん自分もそう思っていた。


企業価値とブランドマネジメント
企業価値とは社会と全てのステークホルダーの信頼度
の総和。コマツでないと困る度合いを高める活動。
社員はコマツでないと困る。株主は乗り換える。社会
、まぁ、一般社会というのはコマツに感謝なんかしな
い。お客さんは違う。社会と株主とお客さんが勝ちを
判断する。
社長&CEOがこのステークホルダーに徹底してやる。
社員に6年やりつづけた。課題と足りないもの。デー
タとか徹底的に示す。工場へは社長が直接行って、話
をする。コマツの社長は大変。でもこれをやると決め
たからやる。


○ ブランドマネジメント
ブランドマネジメントとは、コマツでないと困る度合
いを高める、と定義。チリのダンプはコマツから離れ
られない。お客さんとの関係がそこまでにいかないと
ブランドにならない。


お客さんとの関係はレベル1〜レベル7で定義してい
る。レベル1は「コマツきらい」、全てのお客さんの
レベルを1ランクあげよう、というのが今の目標。


→ まず自分たちの言葉で定義しているということが重
要。そして、お客さんとの関係もまさにその通り。


○ 人材育成
90年から毎年7名くらい留学させている。
英語を覚えろ、人脈を作れ、というのが目的。
言葉を覚えるのは20代でしかできない。


坂根氏は29歳のときに留学希望を出して落ちた。そ
もそも、29歳なんていうのは、人を使ったこともな
いのに、どうやって判断できるんだ、という話で皮肉
を言っている。


アメリカのMBAの欠陥。人を使ったこともない人間を
人を使えるかどうかで判断してしまっている。人は信
用をえないとついてこない。
コマツがつぶれると言われていた頃、石川さんって人
が社長をやっていたのだが、この人についていったら
つぶれないと思った。自分もそうなりたい、と思った

信頼を得るためには、問題点を指摘してこうしたらで
きるというのを示すしかない。有言実行。


敗者復活戦を必ず入れる。人は見抜けない。
課長研修、部長研修。
まず育成したい人をリストアップする。72のプロジ
ェクトがあり、そこに入れる。コマツウェイを教育材
料にする。常に後継者育成を考えること。これはとて
も遠大なスケジュール。言葉では簡単だが、これをい
かにできるかが会社の強さを示す。


→ 人は見抜けない、というのを何度も強調されていた
。たしかにHさんも同じようなことを言っていた気がす
る。その人といっしょに働いたことのある人からの紹
介しか受けない、みたいなことを。


○ 将来
「アジアと共に栄える」、これしか日本の将来はない
。沖縄の安全保障とかではなく、これからはアジア。
これまではアメリカだったから日本海側が発展するチ
ャンス。石川のが生活コスト安い。
釜山につながれば、金沢港は釜山から世界へいける。
その金沢港を整備してもらっている。


→ だとしたら、中国との関係、台湾との関係はどうし
ていくべきか。


○ 改革
改革は企業も国も同じ。
経営改革。
見える化、道路の問題も同じ。
・成長とコストの分離
・強みを磨き、弱みを改革
・大手術は1回だけ
戦略立案
・固定費の削減
・アジアでの成果
ダントツ商品、ダントツ技術の開発


? 成長とコストの分離
? 固定費を思い切り下げる
? アジアしか将来はない。中国と栄える。
? 今は元気なコマツも日本のオペレーションの競争力
を維持していく上での海内は多い。


そういう意味で農業もまだチャンスがある。
出雲大社なんかは縁結びの神様としてもっとアジアに
宣伝したらいい。観光のために。


○ 宣伝
7月2日、21:00、BSフジテレビ。
違う視点でたっぷり話ができる。


以下は、堀氏との対談。


(質問)
20代のときの留学落ちた後、どのポイントでどういう
能力が身についたか。こういう経験があったから今の
自分がいる、というものを教えてください。


(回答)
まず、入社してすぐブルドーザーの設計をやった。
コマツがつぶれるかもしれない、と言われていた時期
。トップ10入りの高成長会社だが、キャタピラー
ためにつぶれると言われた。
まずブルドーザーの品質が悪いのでクレーム対応で忙
しい。でも、人前で話をするのが好き。客を説得する
コツ。昼に大阪でクレームの電話を受けて、これから
では九州に行きます、といって実際に20:00ぐらいに
九州につけば、それでOK。お客さんのニーズをどうキ
ャッチするか。クレーム対策、品質管理。


その昔、トヨタアメリカの車の部品、1つ1つを分
解していた。


TQM、設計部門の診断、その仕事をやった。それをやっ
たことで設計全体のことを常に見ながら、PDCAという
サイクルをまわした。PDCAの思考パターンが身につい
た。全社の品質改善活動をそれでやるようになる。


それで社長室に近いところにいるようになった。月例
の取締役会にもパイプイスを持ってきて出ることがで
きた。そうすると、今まで、工場長が取締役会のため
ということで、自分に品質やクレームの資料をまとろ
と作らせ、自分は一生懸命に作っていたが、取締役会
ではそんな話は一切なかった。毎月用意していた資料
は何だったんだ、という感じ。それと同時に社長と工
場長との話はレベルが低いと思った。そのときに「俺
、この会社いけるぞ!」と自信がついた。30歳のと
き。この会社、この程度なら俺はやれるぞ、と。


(質問) 人材育成についてどうか?


(回答)
人材育成の前に人材発掘がある。
これでも見誤りがある。
人には2種類いる。
上に上がれば上がるほど大きい仕事をする人
上に上がれば上がるほどダメになる人
課長であれば、部下のあいつのあいつの家庭事情は...
といったところまで把握しないと仕事が成り立たない
。部長はちゃんと指示を出して課長を引っ張る。


上にいけばいくほど能力を発揮するか、どうかは段階
をおってみないと見抜けない。


いきなりNo1ではなく、No2、No3にあげてみないと人
は見抜けない。子会社のトップに3人後継者をリスト
アップしろ、自分とこにいないなら、他から探してこ
い、という。毎年それをやる。すると、毎年変わる。
人は簡単には見抜けない。


→ 段階を追ってみる、それこそ、10年以上の長い目
線に立たないとこういう言葉は出てこないだろう。人
材というのはやっぱりそれだけ長い目で見るべきもの
なんだろう。


(質問)
2種類の人は何が違うのか。


(回答)
部下の範囲が広がる、ということはメッセージで引っ
張るということ。言う度に内容が変わるようではダメ
。自分は6年間同じことを言い続けた。それがレベル
アップしているだけ。違うことももちろん言いたい、
でも言わない。それで結果を出す。それで初めて大丈
夫だと思ってもらえる。


ここからは聴講者の質問。


(質問)
今の建機をどう見る?


(回答)
建設機械、日本、欧米、中国ととある。
日、欧米は落ち続けている。
中国、インド、インドネシアはもどっている。
中国は10月〜1月に前年比50%ダウンとなったが
、2月、3月、4月が前年比もどり、15%増に。
5月は前年と同じ。6月はインサイダー情報か。


中国がもどってくるのは大きい。
米国が元気でも、中近東、アジア、アフリカは元気じ
ゃない。中国が元気だとそれらも元気になる。
先進国はやっぱりアメリカの消費に依存している。


今後米国の失業率は10%になる。
オバマ大統領のやることが実際に実行されるのは10
月以降。年末から米国はもどってくるかも。
米国がよくなると日本は半年遅れでよくなる。
ヨーロッパは2年くらいきびしいだろう。


(質問)
敗者復活はどういうこと?
失敗の種類とか、復活の後どうだったかとか。


(回答)
社内ビジネススクールがある。毎年30人くらい受ける
。大卒のコマツが150〜200人。何年かの束だと、700
〜800人、そこから30人を選ぶ。
その周辺でもれた人をすくいあげる。
課長のBコース、部長のAコースでは人が変わっている。
常に周辺を広げてひろうようにしている。


(質問)
こういう改革、手術はなぜ1回なのか?
人間力を高めるために心がけていることはあるか?


(回答)
人間の体でも手術で助かるとしても、1回じゃないと
もたない。ここまでの手術をしたら再生するという確
信をもてないといけない。つめていけば、確信を持て
るはず。そうじゃないと細切れの手術になる。


担当役じゃできない。社長じゃないとできない。
話はそれるが、コマツがどっかとビジネスをしようと
かなると、こっちは社長なのに、向こうは出てくるの
が担当役員。担当役員は3年で変わる。自分の仕事を
失いたくない。仕事さえとてきたらいい、1%でも利
益が出てくればいい、なんてマインドの担当役員と仕
事をしても、それは相手が悪い。そもそも考え方が違
う。どんなに努力してもダメ。だから、そういうコラ
ボとかはやめろという。日本の低収益企業は、担当役
員にまかせてもリストラするはずがない。社長がやら
ないとダメ。


それと天下りをやめた。天下りの会社が高収益になる
はずがない。部下が燃えるわけがない。部下をビジネ
ススクールで教育しても高収益になるはずがない。3
段階の賃金体系がある。本社、出向、もともとの買収
した会社、の賃金体系。


→ 考え方が違うっていうことだろう。価値観の問題



賃金体系が違うのに高収益になるはずがない。
だから、1時金を払うから、出ていってくれ、とした



希望退職は「いくらの1時金がいいですか?」と役員
以外の全員にメールで送った。ただし、全員に送った
ということは言っていない。だから、人によっては、
「なんで俺にこんなメールが来るんだ?」といって、
頭にきてやめた人もいる。その結果、1100人。
田舎のソバ屋がやりたかったかつての部下。みんなが
必ずしも肩たたきの人ばかりじゃない。でも、2度と
やりたくない、そしてやらない決意でやった。子会社
1つ1つを再生しないと会社が再生しない。


この肝心な部分をやっていない会社がある!!!


人間力は、課長のときに自分が部下からどう見られて
いるかはだいたい想像できた。部長になると、それが
ちゃんとわかっているか不安だった。部下に本年のと
ころを聞いたことはないから、自分の人間力はわから
ない。
今までは座右の銘を「知行合一」としていたが、今は
「誠」と書くようにしている。
有言実行で人の信頼を得られる。
表に出てるのが全てと思ってもらえる。
ここぞというときには誠意を尽くす。


(質問)
これからどういった製品を開発していくべきか?


(回答)
ダントツ製品。
商品企画課長だったとき、新商品というと、モデルチ
ェンジの企画書を作り、OKだと、試作して、そして、
チェックして、耐久試験して、評価して、量産になる

マーケットイン、マーケットインというがその試作を
代理店に見せると、必ず、競合に対してここがダメ、
あれがダメとなる。そしてどうなるかというと、競合
に対して、全てにおいてちょっといい商品ができるが
、同時に少し高いものが出来上がる。


だから、負けていいところをまず決めた。
そして、それを代理店と合意した。
でも、その代わり、環境、IT、安全では絶対に負ける
なと言った。


ダントツ商品というと、問題なので、それは広告には
出していないが、ポルトガルでは広告に「DANTOTSU」
とのっている。それぐらい響きがよかったのか、浸透
している。


GPSがダントツの例だが、ハードウェアの時代は終わっ
た。サービスの時代に入っている。ハード+ソフト、
これをITで実現できる。環境、IT、安全は多くの商品
で共通。


→ これは環境、IT、安全でまだ差別化できる余地があ
るってことだろう。だから、冷蔵庫やエアコンなんか
も環境ではまだまだ勝負できる。


(質問)
ミドルアップダウンが不可欠といったが、ミドルが動
き回れるコツは?またミドルのときにやっておくべき
ことは?


(回答)
ミドル=課長クラスとする。
トップダウンが強烈だと、ミドルは指示待ちになる。
キーワードとして、「環境、IT、安全」「ダントツ」
「コスト改善(捨てるところを決める)」だけ言い、そ
れ以上は、言わなかった。詳細を言うとミドルは指示
待ちになる。でもこれはすごく難しい。言いたくなる
。今の社長はもっとそれより下におりる。トップの
性格。言いたくても気をつける。
指示待ちにさせない。
A研修、B研修、遮那に500人受けた人がいる。
ミドルを教育する。ミドルが大事だと理解してくれて
いる。


(質問)
コマツでミドルの○○です。36歳。60歳、24年後のコ
マツはどうなっているか?


(回答)
君たちが作りあげるもんでしょ。
90年代、前の社長がいい会社を目指そうといった。
前々の社長がガバナンスの基礎を作った。その後、ア
ジア進出。小松は社内の情報システムを自前で作って
いたが、社外をベースにカスタマイズした。自前主義
をやめた。これはアメリカに行って思った。アメリ
はSAPが共通だから、会社が変わっても仕事ができる
。今は、グローバル同時立ち上げとかができる。


企業価値をあげるが、注目されない。
日経のPRISMで、01年231位、07年に1位、06年に11位
、08年も1位。
前々の社長のベースがあってそれを出せた。
「○○くんの質問にもどるけど」
いい会社っていうのは大事。
いい会社で強い会社、両面を目指して頑張る。
将来のコマツを担ってやってください。


(質問)
経営会議では集約が大事だがどういうリーダーシップ
をとっているのか?


(回答)
海外トップの教育が5年前からはじまっている。
海外会社のトップは15年前はコマツの役員がやって
いた。その後、ローカルの人にしようとして、外部か
らスカウトしたアメリカとか。でも、これは成功しな
かった。いきなり社長ではなくまずは部長とかにすべ
きだった。
今は、CEOアメリカ人、COO日本人、とかにしている。
中国はCEO中国人。さっきの○○くんは中国のベテラン



日本企業は、商社、銀行以外はほとんどが海外も日本
人がトップになっている。トップのローカライズは、
10〜20年の計画でやらないとできない。


その礎がコマツウェイ。価値観なら共通で持てる。バ
ックグランドが異なっても価値観は本当に理解できる
。価値観だけは共有しよう、それがコマツウェイ。


→ 価値観をこういう見方するっていうのは本当に目か
らウロコだ。


(質問)
日本の政治に対して、民間で何ができるか?


(回答)
3月21日に総理官邸に行ってきた。87人の有識者懇談会
。フリーで呼ばれたのは何人かだけ。3分でしゃべれ
、といわれた。失礼だ。
やることは日本に山積しているが何が本質かを話した

一言でいうと、中央集権。アメリカなんかは外交、防
衛などは中央集権で後は州になっている。
日本は圧倒的に中央集権。
2大政党といっても、結局中央で議論するから、成長
とコストをわけていかにみんなで知識を出すか、では
なく、全国一律主義の成長、コストはいっさい考えな
い、もらった予算は全部使う、ということになる。


地方は金と権限ない。だから文句言うしかできない。
大阪の橋本知事。コストは削るが成長はできない。


それぞれに知恵を出させる仕組みがいる。道州制とか
まかせられない。まず、5兆円を1県単位に1000
億円ずつわたす。ひもつきにしない。
そこで、アジア、IT、環境、安全の議論をする。周辺
の県と相談したりする。そしてコンペをする。
例えば石川県なら「金沢港を国際化して釜山と、そし
てアジアへ...」みたいな。
これを全部の県で公表させる。
そうすると、どの県がまじめにやっているかわかるよ
うになる。自分の県がただのばらまきをやったら、有
権者は批判するようになる。
これを提案したら、後で聞いたら、「あなたの意見は
goodだったのでやった」と言われた。でも、まったく
理解されていない。結局、ひもつきで1兆円使っただ
け。
2大政党なんてなると、かえって不安定になる。
中央政権なら強い政権が必要。
(→ 中国の共産党政権のようなものだろう。)
でも、これは中央集権なら、ということ。
地方主権でやるべき。ひもつきじゃない金を出す。
おそまつな知事は批判を受ける。まずはそうなるため
の場を作らないと。


(最後に)
前向きになにかやろうとしないと、知恵は出てこない
。本当はこういうのを企業のトップが集まってやりと
りすると、自分も跳ね返りがあていいのだが、そうい
う場が欲しい。