過去を否定しない

この前のNさんの発表に対しては物足りなさを感じた。
結局、今までがどうで、それに対して今回何をしたの
か、というのをかなりぼかして言ってしまったために
いまいち伝わってこなかった。


僕としては、過去を全否定した方が、今やっているこ
との主張がクリアになったと思う。そのことともNさ
んに伝えた。でも、Nさんに話しながら思ったのは、こ
れは必ずしも正しいやり方ではない、ということだ。


過去を全否定して、今の正当性を主張することは簡単
である。でも、それっていうのは、その過去を作った
"人"を否定することにもなりかねない。決して自分に
その意図がなかったとしても否定されたほうはそう受
けとるだろう。そうなってしまうと、うまくいくもの
もうまくいかなくなってしまう。


よく考えてみると、パナソニックにおいて中村邦夫
が改革を行ったときも、過去を否定はしていなかった
と思う。過去がダメだったのではなく、それが時代に
そぐわなくなっている、それにも関わらず過去をひき
ずってはいけない、という主張をしていたと思う。そ
の上で、新しい未来を作っていかなければならない、
と言っていたと思う。


他の改革にしても、改革とは「賞味期限が切れている
」という言い方はしても、「過去が間違っていた」と
いう言い方はしないはずだ。


例えていうなら、再建のプロがやってきた自社で、「
あなたたちがやっていることは間違いだ」と言ってき
たとして果たしてそれを受け入れられるだろうか。自
分たちが信じてやってきたことを全否定され、その人
を信じられるだろうか。


人を動かす、というのはこういうことなのかもしれな
い。