任天堂

任天堂 "驚き"を生む方程式 井上理 著」を読んだ
。新聞広告に「枯れた技術の水平展開」という記載が
あり、それにひかれて購入した。


○ PS2はなぜ売れるのか
ゲーム機ではなく、DVD再生機として購入されているか
らではないかと磐田は考えた。DVDプレイヤーと比較す
れば、半額から3分の2程度。この価格で最新のゲー
ムを楽しむことができ、さらに昔買ったPSのソフトも
遊ぶことができる。昔のように人々はどうしてもゲー
ムがやりたくてゲーム機を購入しているのではない..
.。

まさに僕がそうだった。DVDプレイヤーとしてプレステ
2を買っていた。


○ 「2画面にしたらええ」
山内相談役が社長を退くさえに、「2画面にしたらえ
え」というのを残したという。この先見性もそうだが
、岩田社長を後任に据えたその人物眼も恐るべきもの
がある。


○ 毎日楽しい
竹田が提示したのは、「毎日新しい」というコンセプ
ト。毎日電源を入れてもらうには、例えば天気予報や
ニュースのように、毎日新しいものが、それも家族全
員が興味のある何かがあれば良い。


○ ネットビジネスの捉え方
「何が世の中のネットビジネスって、ものすごく空想
で成り立っていて、夢を語ることが先行しすぎている
と僕らは思っている。例えば、実はこのページは毎日
、世界中で3000万人が見ているという実績が来た
ら、それをどう利用すればいいか、後から考えればい
いんですよ」

これはWiiチャネルについての岩田氏のコメントだが
、まさにそうだと思う。Youtubeにしろ、Twitter
してもそうだということだ。ビジネスモデルを最初
に考えても決して強力にはならない。コンセプトが
先でビジネスモデルが後というのはこういうことを
いうのだろう。また、こういう部分で「タダで売り
たいと思わないけれど、大儲けしたいとも思ってい
ない」という、こういうコメントができるあたりが
いい。自分たちが何屋かということを認識できてい
るということだ。


○ マリオの起源
ゲーム&ウォッチの新作として開発中だったがの、ポ
パイだった。しかし、版権の問題でポパイとその仲間
のキャラクターが使用できなくなった。ただし、ゲー
ムの舞台とルールなど、骨格は流用できる。そこで、
キャラクターを考えたのが宮本だった。宮本はポパイ
の代わりに「マリオ」をオリーブの代わりに「ピーチ
姫」をブルートの代わりに「ドンキーコング」を描き
、「ドンキーコングが樽を投げる」「マリオがジャン
プして避ける」という新しいアイデアを提案。ちなみ
にもともと決まっていた工事現場という舞台設定から
作業服のキャラクターを想起し、粗いドット絵でもわ
かりやすいという理由でヒゲをつけたキャラクターを
描いて、単に「おっさん」と呼んでいた。米国法人の
社員に見せたところ、マリオという同僚に似ていると
いう話題になり、そう命名された。


○ 岩田社長
任天堂はなぜ、こっちへ向かうのか、何回も何回も
繰り返し言いました。その過程で、言っていたことの
何かが現実になって、一人腑に落ち、二人腹に落ち、
という感じで全員に浸透していった。まぁ、きっと同
じことをしつこく言い続けてきた、ということに尽き
るのかもしれません。」


Wii Fit
ランニングマシンの隣にWii、学校の授業でDSという、
従来のゲーム業界の常識では考えられないような展開
。しかし任天堂は、「私たちは日本を、世界を健康に
したいんです。」と言って自ら健康関連ビジネスへ参
入することはしないし、「子供たちの成績を上げたい
んです」と言って教育関連ビジネスに躍起になること
もない。
任天堂という会社は、昔からゲームという事業ドメ
イン以外に対しては極めて禁欲的。余計なことはしな
い会社なんです。Wiiフィットが普及したからといっ
て、自らがデータを収集して健康管理のビジネスに手
を出そうなんてことは、絶対に考えられない。」
「だって、私たちは、娯楽の会社ですから」

これってある意味すごく勇気がいることだ。儲かって
いる分野があれば誰もがもっとそれを伸ばしたくなる
。ただちゃんとそこで自分たちがやるべきことなのか
どうか、その判断ができるか、というのがすごく大事
なんだと思う。


○ やりたいネタ
「すごく任天堂が恵まれていると思うのは、今、作っ
てみたいネタの方がやれる人の数より圧倒的に多いん
ですよ。だから、宮本と2人で話していて、それはい
い案だってお互いに認めているのに、チームが足りな
いよねっていう話が結構ある」

こういう指標で自社を評価してみたらどうなるだろう
。やりたいネタとやれる人の数、任天堂とは逆の結果
になるんだろうな。


任天堂らしさ
報酬ではない何かが従業員を惹きつけている。それは
、やはり任天堂らしさを形作るDNAに違いない。それを
固守することは、任天堂の経営を担う者の宿命でもあ
る。岩田は語る。「任天堂が何でも屋になってしまう
と、任天堂の個性が失われて、任天堂の良さが失われ
ていくと思うんです。私は尖っているから強いと思っ
ていますから。強みというのはそういうものだと思い
ます。」事業拡大をしないのは、得意分野の「娯楽」
に徹したいから。リスクの大きい「娯楽」だから、預
金で守りを固め、M&Aもしない。すべて理屈は通るの
だが、やはり根底には、任天堂らしさすぉ守りたいと
いう意識があるからこそ、余計なことはせず、拡大も
しないのだ。「独創的で柔軟であること。これはある
意味、任天堂の社是ですから。文書として伝ってない
だけで、山内時代から、たぶん任天堂がずっと守って
いくべきこと。それから、人に喜ばれることが好き。
言い換えるとサービス精神ですかね。うん、それから
知的好奇心があること」


○ エネルギーと時間の使い方
任天堂は稟議を通すためのプレゼンテーションや交渉
、社内調整など煩わしい作業を、あまり要求しない会
社なのだと、岩田は言う。「例えば宮本が、会社から
どうやって予算を取るかということに、時間やエネル
ギーの半分を使わなきゃいけないとしたら、今と同じ
だけのクリエイティブのパワーをこの年齢で維持でき
ないと思う。その価値を(宮本は)若い頃にわかりま
した、ということなんですね。」


○ 役に立たないもの
「僕らは基本的にはずっと役に立たないモノを作って
きました。役に立たないモノに人は我慢しない。説明
書は読まない。わからなければ全部作り手のせい。ゲ
ームソフトも5分触ってわからなければ、これは『ク
ソゲー』だと言われて終わりですから」だから任天堂
は気持ちよく遊んでもらうための努力を20年以上、
積み重ねてきた。ちなみに家電屋さんはインターフェ
ースという部分で何かサボっている。でも僕らは、一
番そこを真摯に考え、一番厳しい環境で戦って来まし
たから。


○ 10年
「10年後まで種がありますとハッタリを利かせても
、それはウソなわけです。ただ、種を新しく仕込んだ
り、見つけたりすることが、組織として上手になった
んだと思います。」