30代・40代・50代で提案

ブラザー工業の安井氏の著書「ブラザーの再生と進化
―価値創造へのあくなき挑戦」の中で印象に残った内
容。

今後の会社の方針を決める際に、30代、40代、50代、
それぞれの世代別でチームを作って最終提案をさせた
。案の上、というような内容だった。これを今、うち
の会社でやってみたらどうだろう。

この前、Nさん、Oさんと話したときに思ったのは、や
っぱりドラスティックな意見が出てきたとしてもそれ
を受け止める寛容性があって初めて成り立つんだろう
なぁ、と思った。

以下、その内容だ。
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ブラザー工業は、ミシン専業の時代を経て、タイプラ
イターなどの事務機、家電、工作機械などへと製品を
多角化させてきた。しかし、そのためにかえって軸足
を失い、企業イメージが分散しただけでなく、商品分
野と販売ルートの不整合を招き、結果として業績が悪
化してきた。

それぞれのチームは平均年齢が三十代、四十代、五十
代になるような人選になっている。一チームは、リー
ダーのもとに、ブラザー工業の経営企画、商品企画、
技術、開発などの核分野から七人が参加し、それにオ
ブザーバーとしてブラザー販売からも一人参加すると
いう構成にした。

ブラザー工業を独創性・創造性にウェートを置いた創
造開発型の企業にしたいということであった。

五十代のチームは、ミシンやタイプライターや家電な
どで過去に成功体験がある世代である。それだけに、
その成功体験が災いしてか、安定を望むところがあっ
て、やはり考え方が極めて保守的で、危機意識も薄く
、現状肯定型の「改善」を提案した。

四十代のチームは過去の成功体験がもあるが、これか
ら十年、二十年を過ごす会社の将来に対する危機意識
も持っていて、競争力を失った事業の整理を中心とす
る現状打破型の「改革」を唱えた。

最も危機感が強かったのが三十代のチームである。彼
らはブラザーが工業の業績がピークを迎えた1985年の
前後数年間に入社している世代である。そのため、ほ
とんどが成功体験を持っていない。それどころか、ブ
ラザーの主力事業の一つだったタイプライターは円高
で急速に売上が落ち、新規事業のカラーコピーやファ
クスもなかなか立ち上がらないという状況の中で、給
料もボーナスもほとんど上がらず、会社の将来にも自
分たちの生活にも不安や不満を持っている。もともと
若い人たちは感度が優れていて、社会の変化や環境の
変化に敏感である。それだけに、当時のブラザー工業
が置かれた状況に対する危機意識は非常に強く、現状
破壊型の創造的「革新」路線を打ち出してきた。具体
的には、不採算事業からすべて撤退し、情報機器関連
事業だけに経営資源を集中すべきだというものだった



全体的にはやはり最も年代が若い三十代のチームの結
論が一番革新的だったが、四十代のチームの結論の中
にも、部分的には三十代チームより革新的な意見も含
まれていた。そこで、私は三十代と四十の双方の意見
を取り入れた中間型を採用することにし、それに基づ
いてさらに議論を重ねてもらい、「二十一世紀ビジョ
ン」(十年後のブラザーのあるべき姿)と題する最終答
申を出してもらうことにした。


1990年9月に出されたこの最終答申には、次の3つの大
きな目標が掲げられている。
・「社会にとり、社員におtり良い会社になること」
・「イメージ分野において、世界に通じるプリンティ
ング技術を持ったメーカーとなること」
・「ファッション分野において、世界一のアパレルシ
ステムインテグレーターとなること」
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