PCは赤字じゃない!

今日の日経新聞に「薄型テレビ、デジカメ、赤字に」
という見出しで、SONYパナソニック、シャープなど
の苦境を伝える記事が載っていた。そこに、PCについ
ても記載があったのだが、富士通NEC東芝、各社の
PC事業は黒字なのだという。


以下、記事の内容。


一方、NEC富士通東芝のパソコン事業はいずれも黒
字。5万円前後の低価格ノートパソコンの攻勢を受け
るなど環境は厳しく平均価格も下がっているが、海外
生産の進展と生産管理の向上が採算維持につながって
いるようだ。NECの場合、生産工程の大半を中国などに
移管し、国内に残るのは最終的な組み立て工程だけ。
資材調達から生産、販売まで一貫して管理して過剰在
庫に陥りにくい体制を整えている。東芝も生産を他社
に委託し、固定費が切りあがらない工夫をしている。


これには驚いた。ネットブックの普及前から、「なん
でこんな赤字事業をやめないんだろう。」と不思議に
思っていたのだが、ネットブックが一気にシェアを拡
大しても赤字には陥っていないのだ。自分の思い込み
というのは恐ろしい。僕自身、日本メーカーのPC事業
は赤字事業の象徴ぐらいに思っていた。さらには、富
士通やNECなんかは事業のほとんどがSI事業にシフト
しており、ハードをやり続ける必要なんかなくなって
いると思っていた。


でも、そうではないのだ。やりようによっては、競合
がひしめき、コスト圧力がかかる状態であっても利益
を出すことはできるのだ。そのキーは記事にもあるの
だが、「在庫をもたない」と「どこをその会社として
のプロフィットゾーンとおくか」ということだろう。
工場の投資などは必要になるが、一度投資してしまえ
ば後の固定費は人件費と工場維持費ぐらいだろう。完
全受注生産に近いレベルにもっていけば、材料費や加
工費の投資は無駄にはならない。あとは、ブランド力
を維持し、営業が売り場面積を確保し、プロモーショ
ンをかけていけばいい。とりあえず、今の状況であっ
てもこれで利益は出せるのだ。


さて、そう考えれば、うちの製品だって利益を出せる
ようになるのではないだろうか。ヒット商品、ヒット
商品、言うが、あくまでそれは攻めの戦略であり、守
りの戦略にも打ち手はあるということだ。たんに、倉
庫や作業スペースを削減するのではなく、本質的なと
ころにやりようはあるんだと思う。例えば、うちの製
品なんかは基本的には試してから買うような製品であ
り、かつ配送が必要だ。そう考えれば、必ずしも店舗
で在庫を抱える必要はなく、売れた時点で直接工場に
連絡が入り、そこで生産して、工場から直接お客さん
のところへ発送すればいいと思う。それで受注生産完
了だ。ヒット商品ばかりを神頼みするのではなく、か
け声だけで、コスト削減を言うのではなく、本質的に
まだまだ生産管理・製造・調達の活躍の場っていうの
はあるっていくことだと思う。今の彼らはその心の火
が消えてしまっている。でも、こういうビジョンを出
して誰もやったことのないモデルにチャレンジするの
であれば利益体質は作れるのではないだろうか。


一方で、利益が出ているからといってそれでいいか、
というのは別問題だ。何かを変えようとしたときに、
それに抵抗する正論としての反論は、「利益が出てい
るのになぜやめる?」という主張だ。でも、本質的に
企業を変えるならばそれこそがやらなければいけない
ことなのだ。


恩蔵直人氏の「コモディティ化市場のマーケティング
論理」にあったのだが、松井証券松井道夫氏は、「
私が社長として取り組んだ最初の仕事は、利益の上が
っている支店の閉鎖だ」と語っている。ヤマト運輸
宅配便事業に乗り出すべく、三越の配送事業を切り捨
てた。IBMはソフトウェアやサービス部門へ経営資源
を集中させるために、パソコン事業をレノボグループ
に売却している。