トヨタのスポーツカー

2月19日に、「トヨタ カローラアクシオ“GT”登場」
という記事が出ていた。このカローラのGTモデルの
投入の狙いとして、担当者は、「アクシオや『フィ
ールダー』といった若者向けのモデルもありますが
、かつてのカローラのDNAを復活させ、若い人に車の楽
しさ、とくに自分で車を作りあげる楽しさをアピール
したいと思っています」と語っている。


一方で、昨年12月26日の大前研一氏の「ニュースの視
点」で、氏は「トヨタは20代の若者の車離れという状
況に対して、低価格帯(200万円以下)のスポーツカー
を作ることで若者の車離れが戻ってくると考えている
ようですが、これは大きな間違いだと思います。私は
日本におけるレクサスの販売でも、トヨタが若者のニ
ーズを掴みそこねているのではないかと批判しました
が、これも同じ発想です。もはや「若者=スポーツカ
ー」という時代ではありません。トヨタが世界随一の
優良企業であることは疑いありませんが、最近のトヨ
タを見ていると、セグメンテーションが不得意で、市
場のニーズを掴みきれず、若干ステレオタイプの考え
方が強すぎるところがあると思います。」とも語って
いる。


私も大前研一氏の考えに賛同する。もはや、「若者=
スポーツカー」という時代ではなくなってきている。
一昔前は、バイトしてやっとの思いで車を買うという
大学生がけっこういたと思うが、そうした大学生の数
がどう変化しているのかをおってみればわかるのでは
ないだろうか。顧客の購買年齢層の変化であったりと
か、レンタカー市場の状況、などからも判断できそう
な気はするのだが。マツダロードスターなんかは実
際どうなんだろう。魅力的なスポーツカーを作れば若
者がもどってくる、という考え方は、それこそ、「か
つてのよかった頃をもう一度」思考と同じではないだ
ろうか。


さて、なんでこんな話題に触れたかといえば、自社製
品についても同じようなことが言えると思うからだ。
製品Mにおいて、新商品の投入を予定しており、それに
復活をかけている。それの売れ方で事業判断をする、
という。


でも、もはやその事業環境自体が変化している中で商
品の機能・見た目だけを変えたところで、それは需要
を喚起するものにはなりえない。せいぜいシュリンク
していく市場の中で、「他社とはちょっと違うね」と
思ってもらえるくらいだろう。かといってそれが購買
につながるとは限らない。「お客さんの要望に応えた
!」と企画は言うが、結局、価値観が変化している中
においてはどれも意味をなさない。何が言いたいかと
いうと、トヨタのスポーツカーと同じで、価値観が変
化しているのに、魅力的な○○を出せば売れるはず、
と信じているところに問題がある。


ちょっと話が脱線するが、この商品で事業の継続の判
断をするというのであればそれはそれでいいと思う。
でも、本当にそうするならば、その時期とその基準を
全員に明示するべきだろう。例えば、発売後、あまり
売上げが伸びなかったら、従業員は落胆するだろう。
「やっぱりダメだった...」と。でも、判断の期日が
近づくたびに売上げが伸びてきたらどうだろうか。少
しでも自分が何かできないか、とそれぞれが考え出す
のではないだろうか。そして、期日に目標達成まであ
と○○台となったら、従業員はどうするだろうか。そ
れこそ、必要でもないのに一人で何台も購入して親戚
に配ったりする人も出てくるのではないだろうか。こ
こで何が重要か、というのは、それを上からの命令で
行うのではなく、自主的に行うということだ。ここま
でやって、もしうまくいかなくても、そうした必死に
やり抜く経験っていうのは従業員にとって大きな財産
になるのではないだろうか。ただ、最後に一点だけ言
えば、経営者としては、少なくとも自分がこれでいけ
ると信じれない限りは、実行すべきではないだろう。