コンセプトの例

コンセプトの例をとりあえずパッと思いつく範囲でま
とめてみた。


「世界一安い航空会社」 :サウスウエスト航空
「oneday delivery」 :フェデックス
「手術室の効率化」 :ホギメディカル
「お客さんの選ぶ目」 :通販生活
「ホワイトボードをなくす」:サイボウズ
「全ての情報を整理する」 :Google
「世界一安全な車」 :ボルボ
「宅急便」 :ヤマト運輸
「第3の居場所」 :スターバックス
「Everyday Low Price」 :ウォルマート
「自然食品、健康な人々、
健全な地球」 :ホールフーズ
「魔法の国」 :ディズニー
「トータルセキュリティ」 :セコム
「購買代理店」 :ミスミ
「世界初」 :キーエンス


・「世界一安い航空会社」:サウスウエスト航空
世界一安くするためにはどうすればいいか、というの
が判断のよりどころになります。例えば、「お客様か
ら機内でハンバーガーが欲しい、という強いニーズが
あります。」と部下が提案したときに、「それをやる
とお客様が喜ぶかもしれませんが、世界一安くなるこ
とにつながりますか?」と上司は言います。また、別
の部下が、「お客様を喜ばせるために、搭乗時に誕生
日のお客様がいたら、おめでとう、と言ってはどうで
しょうか。コストはかかりません。」と言います。上
司は、「ぜひやってください」と言ってくれます。


・「手術室の効率化」:ホギメディカル
手術器具を製造するメーカーだが、単にメスとかハサ
ミを作っていたらそれで終わりです。でも、自分たち
のやるべきことは「手術室の効率化」だと再認識する
ことで、手術用具をワンパックにまとめたキットを作
りました。これにより、器具の準備の時間は、数十パ
ーセント改善できました。その後も、ありとあらゆる
ものを「手術室の効率化」という視点でみています。
逆にいうと、効率化につながらないものは、やりませ
ん、という意思をもっているのです。


・「宅急便」 :ヤマト運輸
小倉昌男さんが「宅急便をやる」と決めたとき、彼は
一番の大口顧客だった、デパートの配送請負をやめま
した。それは社員に対しての大きなメッセージだった
と思います。自分たちは企業を相手にするのではなく
、荷物を出すのに不便している主婦の人がお客さんな
んだということを認識できたはずです。


・「第3の居場所」:スターバックス
家でも学校・会社でもない自分の居場所。そんな居場
所ってどんなところだろう。そういう居心地のよさ、
という視点で常にお店作っているはずです。


・「トータルセキュリティ」:セコム
自分たちを「警備員の会社」ではなく、「トータルセ
キュリティ」と位置づけるからこそ、巡視ロボットも
開発すれば、子ども・高齢者の見守り、なんかもやろ
うと言うことができるのです。自分たちを「警備会社
」だと思っていたらロボットを開発するなんてできな
いでしょう。


・「魔法の国」:ディズニー
なんでもかんでも園内で売る、なんてことはしないで
しょう。仮に、もしたこ焼きやお好み焼きを売る、と
したとしても絶対にそこから魔法を感じられるような
一工夫をするでしょう。逆にいうとその工夫ができな
ければそうした安易な商品群の拡大とかはしないです
ね。


・「世界初」:キーエンス
とにかく1mmだろうと0.5mmだろうと、自分たちの分野
で他社が世界初を出してきたらすぐに抜き返すそうで
す。それに意味があるかどうかは別に、そうやって世
界初を追求し続けるからこそ、世界初を出せる技術が
培われるわけだし、付加価値を出し続けられるのだと
思います。逆にいうと、どんなに面白い技術でも世界
初じゃなきゃやらないということ。たんなる製品群の
拡大、というのはやらないということでしょう。


さて、強力なコンセプトをみていくと、シンプル、と
いうのはもちろん、そうだが、結局、社員自信が、何
をすべきで、何をすべきでないか、という判断の基準
に成りえることがよくわかる。だから、ある意味、強
力なコンセプトはそれだけで人を動かす力があるとい
えるかと思います。


さて、こういうふうに見ていくと、「なんとかお客様
主義」も「なんとか快適事業」も「なんとかテクノロ
ジー」もコンセプトには成りえない。どれをとってし
ても、「何をやらないか」が決して明確にはならない
でしょう。マイケル・E・ポーターが「戦略とは何を捨
てるかだ」と言ったという。まさに、「何をやらない
か」ということでしょう。


ちなみに松下幸之助さんが現場を歩きまわって、洗濯機
作ったり、扇風機作ったりしていた1940〜50年代なん
かはそれこそどの企業も企業倫理などなきに等しく、
品質もおぼつかなかったので、「お客様主義」という
のが判断基準になりえたんだと思う。


でも、昨今、どの企業も「顧客主義」「Customer
Oriented」を叫び、どの企業ももはやニーズ以上の品
質・高機能を出すことが当たり前となっている時代の
中で、「お客様主義」だけスローガンのように叫んだ
ところでもはやそれはコンセプトにはなりえないだろ
う。それにも関わらず、重点方針が「品質」、「新商
品連打」では、話にならないだろう。まったく経営責
任を果たしているとは思えない。前世紀の経営だろう
。かといってすぐに解があるわけではない。ただそこ
に問題意識を持ち続ける、ということが大切なんだと
思う。


とまぁ、グチのようになったが、逆に言うと、競合他
社が優位性を保っていたコンセプトにおいては決して
できないことをやるところに新事業の意義はあると思
う。そこにこそイノベーションのジレンマが生じるか
らだ。


例えばマイクロソフトなんていうのは、オフィスソフ
ト、webブラウザー、チャット、全て自社で囲い込むこ
とで莫大な利益をあげてきた。それに対して、web2.0
というのはクラウドコンピューティングの中で、情報
を自分で持たない世界というのが拡大していっている
。「情報の囲い込み」VS「情報の拡散」。マイクロソ
フトのコンセプトの中であってはできない。だからこ
そ、web2.0で生きる企業というのは、マイクロソフト
の脅威になってくるのではないだろうか。