若い人の転職

成長意欲がある人間ほど、大企業の中ではその幅が制
限されており、不満を抱くものだ。そうなると、安易
に、転職してみようか、となる。さらに実際に転職活
動をしてみると、意外に面接なんかで自分が評価され
たりするもんだから、「こんな会社やめても、俺を必
要としてくれるところがあるんだ」となって、辞表を
出してやめたりしてしまう。


でも、ちゃんと考えないといけないのは、自分がどう
いう動機で転職をしたいのか、ということだ。ただ単
に上司とウマが合わない、とかその程度のものだった
ら、そんなのはどこの会社にいっても起こりうる問題
だ。また、会社の雰囲気とかにしてもむしろ転職先の
ほうが、いろいろと管理され、裁量の余地が小さくな
ったりする可能性がある。そういうリスクをきちんと
考えないといけない。


まず考えないといけないのは、何で会社をやめたいか
というところだろう。そもそも、上司がイヤなのか、
その仕事がイヤなのか、その職場がイヤなのか、勤務
地がイヤなのか、その部門がイヤなのか、会社自体が
イヤなのか、だ。そこをよく考えずに、本当は上司が
イヤなだけなのに、それを「会社がイヤ」というとこ
ろまで置き換えてしまうのだ。その当たりを本当によ
く考えれば、わざわざ転職というリスクをおかさなく
ても済む問題であったりすることをきちんと認識する
必要がある。


まだ若いうちはそれこそいくらでも転職というカード
をきることができる。でも、基本的に2度目はない。そ
れが当たり前という業界にでもいない限りは、その後
はただのジョブホッパーとしか見なされなくなってし
まう。安易にきったカードの先にどんなカードがある
のか、そこを考えたほうがいいと思うのだ。

Kさんがキャプテンとなって今シーズンどういう戦い方
をしていくかの発表を行った。


基本的には文句のつけようのない内容だった。大きな
枠から話していき、最後は具体的にそれぞれのポジシ
ョンで何を求めるのか、というところまで非常に体系
立てて説明されていた。


まず、目標は「一部復帰」だ。そのためには、これま
でのように負けないサッカーをしてはダメだ。要は勝
ちにいくサッカーをしなければいけない。では、勝つ
ためにどういうサッカーをしていくかということだ。
それは「全員攻撃、全員守備」だ。


なぜ「全員攻撃、全員守備」か。要は相手を圧倒する
だけの技術力もなければ走力もない。そうした中で、
いかに点を取るかとなれば、前線でボールを奪い少な
い手数でシュートまでもっていけるようになることが
手っ取り早い方法だ。


そうなるとチームに求められるものは明らかになって
くる。まずは、前線からの守備、これができないと話
にならない。特に狙うべきはインターセプトだ。イン
ターセプトを狙うようなチャレンジをもっともっと増
やす必要がある。これは練習から心がけていかなくて
はならない。


そして、これを実際の戦術にブレイクダウンすると、
メンバーを考えてみて、フォーメーションは4-5-1とな
る。本来ならば前線でのプレー機会を考えれば、2トッ
プが望ましいが、現状ではメンバーを考えて1トップと
する。FWのメンバーに望まれるのは、1つの椅子を奪い
合うことではなく、中盤から椅子を奪い返すことだ。


さて、そのFWに求められるのはまずは前線からの守備
。これができないと話にならない。もう1つは、味方
からのボールをきちんと中盤に落とせること。要は1人
しかいないわけだからそういうボール裁きが重要にな
る。


次にトップ下の中盤の3枚だ。ここはかなり自由度があ
る。いろいろな選手がいていい。ドリブルのできる人
間、走れる人間、つなぐことができる人間。それぞれ
の特徴を出せばいい。


ボランチの2枚は、一番求められるのはボール奪取力だ
。自分自身で奪えることもそうだが、味方を動かして
奪いどころを作ることもそうだ。


そしてサイドバック。これは打開力。一番求めるもの
が大きい。ここが機能するかどうかがキーとなる。打
開の仕方はロングボールが蹴れることでも、走れるこ
とでも、中盤に確実につなげられることでも、なんで
もいい。とにかく局面を打開するキープレイヤーとな
ればいい。


センターバック、ここでは2枚いるが、対人ができる人
間とラインコントロールできる人間という形でバラン
スがほしい。もちろん、1人で両方出来ればそれにこし
たことはないが。


そしてキーパー。求めるのは安定感。試合によって、
キックの精度や守備範囲が変わるのはよくない。常に
安定感をもって味方に信頼れるようになってほしい。


以上がポジション別に求めるものだ。さて、そして、
そのベースとなるチーム全体に求めるものは次の3つだ
。(1) チームワーク、(2) 武器を持つこと、(3) サッ
カーを知る。まず、チームワークだが、これは味方を
知るということだ。メンバーの特徴を知り、その選手
の強みをお互いが生かせるようになること。次に、武
器を持つことだが、これは1人1人、こういうところで
チームに貢献できるという強みをもってほしいという
ところだ。そして最後がサッカーを知るということ。
局面、局面でどういう判断をすればいいか、守備のセ
オリーにしても、マークのつき方にしても、突破の仕
方にしても、何がよくて、何がよくないかの判断がで
きるようになることだ。


以上がだいたいKさんの話したことだが、ほぼ完璧だと
思う。やっぱり、Kさんがこれだけ考えられる、という
のはそれだけチームのことを考えているからに他なら
ない。どうしたら強くなるか、たんに自分が点を取り
たいとか、目の前の敵に勝てばいい、という短絡的な
思考じゃなくもう一歩高い視点でみているからこそ、
こういうところに辿りつけるのだと思う。


何より一番よかったのは、それぞれのポジションで求
められることの優先順位を明確にしたことだろう。こ
れをやることで、何をすべきかがはっきりとわかるし
、いいか悪いかの判断ができるようになる。これはす
ごくよいことだと思う。


先シーズンの最後のアンケートでキャプテンにKさんを
推薦したのだが、まさかここまでKさんが考えていると
は思わなかった。こういうビジョンが出てくると、自
ずと見方もポジティブに変わってくる。