ビジョンなき仕組み

ある会社がある国に研究所を作ったという。目的とし
てはS大学と包括的に研究提携をするためだという。そ
の過程でS先生とコネクションが出来たらしいのだが、
まだその研究所ではS先生と何かするだけのネタがない
ということもあり、うちにS先生を紹介するので、コネ
クションを作っておいてくれ、ということになったと
いう。


当初その研究所は開発センターなどとも呼ばれていた
ので、いまいちその実態はよくわからなかったのだが
、結果的には研究所、という位置づけだそうだ。ただ
それもトップダウンで指示がきたので設立したのだが
結局何を研究するところなのかはこれからだという。
なんとなく、そういうところじゃないのかな、という
予想はしていたが、Nさんの説明を聞いて納得した。


以前にその会社のグループ長クラスの人と話をする機
会があった。その人は産学連携推進を進めている人ら
しく、「国内のE大学と全面的に研究活動の提携を進
めた」とか「今は米国の大学とシーズが入ってくる仕
組みを構築している」ということを自信満々に語って
いた。


ただ、そのとき話を聞いていて違和感を感じたのだが
、どうもその研究スキームを作る、ということ自体は
わかったのだが、何のために?というのが全然伝わっ
てこなかった。


今回の研究所の話を聞いて、まったく同じような感想
を抱いた。つまりはビジョンはないが、仕組みは作れ
という状態だ。その仕組み作りが目的化してしまって
いるのだ。


それもこれもネタがない、というのが現状だろう。ネ
タがないから、何をしていいかわからない、だから、
そのためにネタが出てくる仕掛けをしよう、という感
じだろう。


でも、僕は逆だと思う。ビジョンがあるからネタが出
てくるはずだ。もちろん、僕自身もアイデアが出てく
る仕組みを作るというのは否定しないが、その会社が
やっているのっていうのは、結局、他人依存のアプロ
ーチに思える。だから違和感なのだ、きっと。自分た
ちでどうやったらアイデアを出せるか、というアプロ
ーチではなく他人のアイデアにどうやって網をかけよ
うかというアプローチなのだ。もちろん、それも必要
なことではあるが、例えば、網をかけたところでその
網が弱かったり、穴が開いてたりしたらせっかくのア
イデアも引っかからない。それはつまり、そのアイデ
アを感じる人材の質が悪かったり、本気でなかったり
、そういう状態ではどんなにシステムを作っても、機
能しないのではないだろうか。