「日本の経営」を創る

三枝匡氏と伊丹敬之氏の対談本である『「日本の経営
」を創る』を読んだ。2008年に読んだ中でベストの本
かもしれない。とにかく読んでいて疲れた。これは、
難しいとか、そういう意味ではなく、2人の会話にとに
かくついていこうとしたからだ。要は目の前で2人が対
談していて何とかその内容にくらいつくように読んだ
、という感じだろうか。でも、そのぐらいのめりこん
だ。


普段、Nさんと話しているような内容がまさしく整理さ
れていた、という感じだ。もちろん、まだまだ具体的
な解があるわけではない。三枝さんのやってきたこと
の延長上にその解があるような内容だったが、まぁ、
結局未来のことはわからない。ただ、自分たちの問題
意識が間違っていないと確信できただけでも、すごく
自信につながった。


その中で気になったのが、パナソニックの事例である
。伊丹氏がパナソニックを研究対象としていたことも
あり、その話題がけっこう出ていた。


パナソニックなんかはやはり将来的な人材育成に危機
感を抱き、早期選抜制度を実践している。その結果、
30代でのグループ長なんかがけっこう誕生していると
耳にする。でも、逆にいうとそれはパナソニックがそ
うせざるをえない環境にいるといえる。


売上高10兆円を目指す企業であり、一つ一つの事業規
模も相当大きい。テレビという一商品を見たとしても
それこそ、何万人という人間が関わっているわけだ。
そういう事業の中にいると、扱っている事業の規模が
大きすぎて、またそれに対して自分個人の裁量範囲が
限定されることもあり、事業の全体観というものは、
どうしても養われにくい。それは会社がそういうシス
テムで動いている以上、仕方がないんだと思う。だか
らこそ、人事はそのことを十分に認識し、その対応策
として早期選抜制度の研修などを設け、そこから、こ
いつは、と思う人材を早期に無理矢理にでも意思決定
する立場に立たせることを実施している。要はそうで
もしないことには、将来事業を担うような全体観みた
いなことを身につけさせることができないからだ。


Nさんに言わせれば、実際にパナソニックの人間に接し
てみるとやはりそうだ、という印象をもったという。
つまり、個々の技術には精通しているものの、事業的
視点という意味でいうと、やはり視野がかなり狭くな
っているのだ。それを踏まえた上での人事施策なのだ



パナソニックなんていうのは、日本に限って言えば、
やはりエクセレントカンパニーだろう。まだまだグロ
ーバルエクセレントというにはその途上なのかもしれ
ないが。そういう意味でいうと、パナソニックの人事
というのはその先端を走っていると考えられると思う
。こうしたところに危機感を持ち、実際にそれを実行
している。また、僕自身がすごいと思うのは膨大な社
員がいる中で、「これは」という社員を選抜できてい
る点だろう。やはり、そこが腐ってしまったら結局、
会社の根が腐ることになってしまう。つまりは、たぶ
パナソニックの人事なんかは本当にトップクラスの
優秀な人たちがいるのだと思う。もちろん全員が全員
ではないだろうが。


Nさんに言わせれば、本当に目利きできているかは微
妙、だいたい半分ぐらいしかできていないのでは、と
いうようなことを言っていた。そうだとしても、やは
りまだまだ他の日本企業に比べれば、まともな方なの
ではないか、と思う。


さて、それに対してうちの会社は...。『「日本の経営
」を創る』、読めば読むほど悲しくなるなぁ。