レガシーシステム

ライフネットの出口氏は著書の中で生保のセールスレ
ディシステムをレガシーシステムとしている。それは
変えていくしかないし、変えなきゃ生保自体が存続し
ないと主張している。


別の業界で言えば、これにチャレンジしているのは、
松井証券マネックス証券がそれだろう。それに続い
て多くのネット証券が誕生した。それらの起業は、従
来の証券営業マンをレガシーシステムと捉えた。個人
投資家の証券市場はもはやそうした流れが主流になり
つつある。


アパレルで言えば、H&Mがそれだろう。予測に基づいた
大量生産による低価格化というレガシーシステムを大
きく変えた。でも、アパレルの場合は、その流れが不
可避だったというよりは、プロセスイノベーション
いう言い方のが正しいだろう。


さて、では製造業はどうだろうか。特に大手電機メー
カーに関して言えば下記のようになると思う。


生保    :セールスレディシステム
電機メーカー:工場+販売網


かつての電機メーカーは全国にその販売網を作り、作
ったものをとにかくそこに流していく、という仕組み
のもとで回っていた。
でも、今その販売網は量販店にとって変わられて、価
格主導権はメーカーではなく量販側が握るようになっ
た。要はレガシー遺産である販売網は自然淘汰的にな
くなっていった、と考えてよいと思う。消費者が比較
し、消費者の立場に立って価格設定しようとする、量
販店という仕組みにとってかわったのは自然の流れと
いえるだろう。もちろん、問題は多々ある。特に、適
正利益というところに関しては議論の余地が多いにあ
る。


さて、電機メーカーのもう一つのレガシーシステム
それが工場だ。中国、東南アジアの新興国におされ、
価格競争をするためには海外に工場をもっていくしか
ないという流れがここ20年ぐらいの流れだった。そし
て国内の空洞化が進んだという議論はあった。今は、
高付加価値、ブラックボックス化という意味で国内
回帰の流れのほうが先端分野では目立つように思える
。いずれもデータに基づいていないからなんともいえ
ないところだが。


でも、自社に関していえば、とにかくそれは後手後手
であったといえる。今さらながらに中国での工場建設
を計画している。結局のところそれでも価格競争に耐
えられないから国内で作るということになったが。で
も、そのときの製造の人と話したのだが、とりあえず
中国に行かないと価格競争に勝てない、ということだ
った。何で中国なのか、ということに関しては、いき
なり東南アジアに行ってしまえば、仮に中国でダメだ
ったときの打ち手がなくなる、というロジックだった
。そのときは反論はしなかったが、結局のところは、
ドラスティックに変えないとやっぱりダメだと思う。
それならば最初から東南アジアに行って勝負してそれ
でダメならもはやそれまでというところでやらなけれ
ば、結局その切り口では勝てないと思った。


まぁ、また話がずれたが、結局はそのレガシー遺産の
工場をどうしていくか、というところだ。パナソニッ
クやシャープなんかは、そのレガシー遺産をさらにさ
らに進化させることでその脱皮をはかっている。


余談だが、シャープなんていうのは販売網のレガシー
システムが崩壊したからこそ、台頭したといえる。い
まだに電機メーカーの販売網システムが主流だったと
したら、その販売網が強くない(と思われる)シャープ
にとっては難しい競争を強いられていたと思う。


さて、出口氏の著書を読めば、生保のそのレガシー遺
産がどうなっていくか、という1つのビジョンが描か
れている。そういう切り口で電機メーカーの工場を考
えたときにどうなるか、というのを考えるのは一つ価
値のあることだと思う。その一つの未来の姿がキーエ
ンスやロームであったりするんだと思う。