15%ルール

昨日、帰り際にK先生に15%ルールについてきいてみた
。K先生が3Mにおられた頃、1980〜90年代は、その仕組
みがすごくいい方向に作用していたという。その中で
K先生はいろいろなことにチャレンジしてきたそうだ。


15%ルールの前に僕が聞いたのは、どういうふうにR&D
を行っているか、ということだ。例えば、メドトロニ
ックのような会社は自分たちでやるというよりは、ス
タートアップの会社にそこをやらせて、そこに資金を
入れ、そうやってインキュベーションして自社に取り
込む(M&Aとか)ようなことをやっているが、3Mもそう
いう感じなのか、ということだ。


K先生はそうではない、とおっしゃられた。少なくとも
自分がいた頃まではと。実際に研究者が自分たちで足
を運び、自分たちで考え、自分たちで手を動かし、そ
うやってものづくりをやってきたという。たぶん、僕
の考えていた外資のイメージとは違った。でも、言わ
れてみれば、15%ルールを作りボトムでアイデアを出
すような会社であることを考えればそうかもしれない



僕自身は、正直大企業のR&Dは機能不全ではないか、
という思いがあって、そういう方向へシフトすべきで
はないか、という意味できいたのだ。僕は、ジェフリ
ー・ムーアの「企業価値の断絶」を読み、全てを自前
ではやらない方向に移るだろうと考え、その典型例
がメドトロニックではと思っていた。


でも、K先生はそういうもの(ボトムから作っていくこ
と)をなくしてしまうのは簡単だ。でも、それを無くし
てしまったらもう生えてはこない、とおっしゃられた
。要は大学のアカデミックな部分と同じというわけだ。
そうしたボトムアップのカルチャーというのは長い年
月を経て蓄積されるものであり、無くしたからといっ
て元に戻すことはできないのだ。


3Mが数年前(今も)、MBA卒の社員が入って、組織をシス
テマチックにしていった結果、業績が悪化していった
という。要はそれによって優秀なエンジニアがいなく
なっていったからだ。


僕自身、K先生に説明したとおり、うちの会社で誇れる
部分というのはそうしたところだと思っている。たし
かにトップダウンでシステマチックにしていったほう
が効率的だし簡単だ。そうだ、効率的なんだ。でも、
たぶん、効率性の先に不確実性はないということなの
かもしれない。非効率の部分を残しておかないと将来
の種がなくなるということなんだろう。


そして、どうやったら15%ルールのようなものがカルチ
ャーとして根付くのか、ということをきいた。返って
きた答えは「お互いをリスペクトすること」だけだっ
た。お互いをリスペクトしていれば、相手が何をやろう
とそれを認めることができるのだ。2日前ぐらいにホテ
ルで3Mには「やっているテーマに周りのコンセンサスが
いる」ということをK先生がおっしゃられていたので、
勝手なことをやるのと、周りのコンセンサスを得るのは
矛盾しているのでは、と思っていたのだが、K先生が言い
たかったのは、勝手なことをやることを認めることに
コンセンサスがあるということだった。そういうことな
のだ。


僕もそれはその通りだと思う、お互いをリスペクトしな
いから管理しようとするし、要求を押し付けようとする
のだ。でも、うちの会社でそれがうまくいくだろうか。


それともう一つ、お互いをリスペクトできるような人材
でないとそれこそ成り立たないということになる。すな
わち、15%ルールが成り立つ前提というのは、それぞれ
が能力もモチベーションもあり、やりたいことに溢れて
いる、ということだろう。そういう人材だからこそ、
15%ルールの意味があるのだ。逆にそうでない組織に、
自由とボトムアップを望んでも、それはただのダメ組
織にしかならないという。まさしくその通りだと思う。


最初にもどるのだが、それがシステマチックな方向に
R&D機能を振ったほうがいいだろう、という僕の考えの
もとになっているわけだ。


では、どうすればいいか。やっぱり人材は変わらない
。変わらないのであればそうした人材を入れ替えてい
くしかない、という。その当たりは、外資系の考え方
のような気がした。


いずれにしても、ボトムアップは無くしたら取り戻せ
ない。では、どうやってそれが機能するようになるか
。そこを考えていかないといけないのだ。