テレフォンシステム

リーズでの研修も最後となった。最終日はコーディネ
ーターのEganさんが彼自身のビジネスの話をしてくだ
さった。


彼自身は元々リーズ大学のTLOを運営していたが、そこ
からスピンアウトして、近隣数大学のTLO機関として、
会社化したのだ。


彼の究極の目的というのは、やはり国民のQOLを高める
というところにあった。健康な生活というのは、国民
にとっての大きな価値である。それを提供するために
医療産業を進展させていくことは大きな使命だと、ま
さに使命感をもって自分の仕事に取り組んでいること
がよく伝わってきた。


そして、何よりも自分がやっていることだ、といわん
ばかりにとても楽しそうに話をしてくれる。僕はこん
なことやってあんなことやって、もっとこんなことも
やりたいんだ、というようにアイデアが尽きない。聞
いてこちらも楽しくなる。


さて、医療機器開発のキーは次の3つだという。大学、
産業、病院、これらをどう連携させていくのか、とい
うのがEganさんの仕事の醍醐味だ。そしてそれらの間
に様々な仲介(!?)機関があり、それらとコラボしなが
ら進めていくのだ。


実際にEganさんが運営しているサービスとして2つある
ことを教えてくれた。これが面白い。1つ目は、医師や
看護師がアイデアをパテント化するサービスだ。実際
の仕事の中で医師や看護師が問題に直面し、こうすれ
ば解決するのに...というアイデアを彼らが持っている
ときにこのサービスをすると、その権利化が行え、ま
た実際にそれをビジネスにつなげてくれるベンチャー
に売り込み産業化へつなげたりするのだ。もう1つは、
医師や看護師が困ってはいるけど、具体的な解決策が
ないというものだ。これはweb上に実際に困っている
問題をupし、それを産業界の人間が閲覧し、解決策が
あったりした場合はその医師や看護師にコンタクトを
とったりできるのだ。つまり、医師や看護師が、問題
があって困っている場合、それと、問題はあって困っ
ているが具体的な解決案を持っている場合、というそ
れぞれの場合によって違うサービスが用意されている
というのだ。これはEganさんにとってはもう7〜8年前
からずっと提唱してきたことだが、最近になってよう
やく政府がその必要性を認めてくれたのだという。


ここで僕が疑問を抱いたのは、どうやってこのサービ
スで儲けるのか、という点だ。その答えはこのサービ
スからはプロフィットを得ないというものだった。で
も、Eganさんの会社は自分でindependent companyだ
と言っていた。では収入はどっから入るのか。それは
政府から入ってくるのだという。要は政府がお客さん
で政府としてやるべきサービスであったりとかコーデ
ィネートEganさんが受託してサービスを提供している
というのだ。だから、TLO機関として会社がまわって
いるのではなく、政府がそれを認めてそこに投資され
るから会社としてまわっているのだ。僕の当初の仮説
としてTLOを独立採算でまわすなんて可能なのか、と
いうものがあった。だから、それを独立採算でやって
いるときによっぽで、事業化が成功しているんだろう
と思ったのだが、答えはそうではなkったということ
だ。まぁ、ある意味予想通りといえば予想通りなのだ
が。でも、このすごいところはやっぱり国がその必要
性を認識してきちんと投資しているというところだろ
う。そこが日本との大きな差だ。


最後に、Eganさんは「Telephone Systemを作りたい」
と言っていた。ちょうどそのときに思い出したのが、
ホテルでのK先生の話だ。たぶん、病院の先生と話す中
でヒントが出てきたりするっていうのは、telephone
systemがない状態であり、ものすごく非効率なんだと
思う。(それが決して悪いわけではない。) Eganさんが
目指そうとしているのは、そうした「実はね...」みた
いなのが有機的につながるような状態なのだろう、と
いうように僕は解釈した。このtelephone systemとい
うのはすごくシンプルだけど本質を表している言葉だ
と思う。でも、これをそういうふうに解釈できたのは
事前にK先生とディスカッションさせていただけたから
だと思う。