中村修二氏とKMDさん

「TLOとライセンス・アソシエイト」という本を読んだ
のだが、これが意外なほどに面白い。その中で青色発
ダイオード中村修二氏のことが取り上げられてい
た。
それまで実際に氏がどんなことをし、どういう考えを
もっていたかなど、正直何も知らなかった。学生時代
にHさんが中村氏のことを評して、「大きな成果はあげ
たが、結局リスクをとらず会社という保護された中で
出した成果だから、それに対して俺1人でやったから
200億円をよこせ、というのはアントレプレナーの言う
ことではない」ということを言っていたのを聞いてそ
れを真に受けていただけだった。


でも、その本の中身を読むと、彼がそれだけのことを
した、というのは十分に理解できたし、さらには中村
氏が訴訟を起こした根本は日亜化学社にあったという
ことだ。要は日亜化学社が先に中村氏を訴訟対象とし
たことで、それに反撃する上でも氏が訴訟を起こした
ということだ。(もともとその意思があったのかどう
かは読み取れなかったが。)


ただ、それだけでなく氏の境遇、研究に対する姿勢等
ひかれるものがあった。それもあり、とりあえず氏の
著書「考える力 やり抜く力 私の方法」を読んだ。


さて、ここまでで氏の話はちょっとおいておく。内容
は、若手研究者が読むのに特にいいと思う。もちろん
経営にもつながってくると思う。


で、だいぶ前にうちのKMDフェローが中村修二氏が来
社されたことがある、ということを言っていた。まぁ
、うちの会社も氏が青色LEDを開発に成功してから手
の平を返したような態度をとった会社の一つだと思う
が。


そのとき、氏はとにかくどんな研究に対しても、本当
に高校生の数学の基本のようなところからよく質問し
ていたという。まぁ、KMDフェローはそんなことぐら
いだけをさらっと話していたのだが。


で、今日言いたかったのはそのKMDフェローだ。中村氏
に実際に触れてみて他にどういうことを感じたのだろ
うか。そういうことをもっと教えてくれたらいいと思
う。果たしてうちの会社に氏のような研究者はいるだ
ろうか、僕はいないと思う。中村氏が毛嫌いするそれ
こそ自分の手を汚さない大企業のR&Dだと思う。


さらに、うちの会社で中村氏が取り組んだ窒素ガリ
ムによるアプローチがうちで取り組むことができたか
、といえばNOだろう。ほとんどの研究者が可能性があ
るのはセレン化亜鉛と主張する中で、窒素ガリウム
取り組む、なんて理由は存在しえない。要はそれをや
るという説明がつかないのだ。でも、大企業のR&Dな
んてそんなもんだろう。結局、既存の常識にしばられ
た可能性という確立論だけでしか意思決定できないの
だろう。(それでももしかしたらうちの会社だったら
できたかもしれないが...。)


そう考えると、システマチックにR&Dを管理しような
んていうのはやっぱりそういう創造の芽を摘む以外の
何ものでもないだろう。


で、KMDさんに話は飛ぶ。今はフェローとして、月1回
のテーマ検討会のご意見番をつとめているが、KMDさ
ん自身、大変優秀な研究者だったといわれている。で
も、今の若手はそんなことは知らない。だから、KMDさ
んが発言をしたとしてもそれはKMDさんからの発言では
なくフェローという立場からの発言として聞く。そう
いう地位から発せられるメッセージに人は本当に反応
できるだろうか。僕はできないと思う。でも、"KMDさ
ん"自身から発せられた言葉だったらそれは違うと思う
。でもそれをやろうとするならばそれこそ若手もKMDさ
んのこと自身を知る必要がある。KMDさんのバックグラ
ンドを知ることで初めてKMDさんの発言の意図が伝わっ
てくるはずだ。


自分自身に関して言えば、2年前ぐらいにこんなテーマ
やって何が楽しいんだ、やめろ、とまで言われた。た
ぶん今思うと直感でそう言っていたんだと思う。でも
僕が知りたいのはその直感がどういうロジックに根ざ
しているかというところだ。


そういう意味でも今度KMDさんと飲みにいってみよう。
人としては信じれる人のような気がする。


だいぶ話がそれたな...。