多様な代替品

とある商品の売上げがかなり落ちてきたのだが、これ
に関しては、正直、どうしたらよかったのかというの
がわからない。つまり、5年前にさかのぼって、その
時点で、「5年後売上げがガクンと落ちることがわかっ
ています。あなたならどうしますか?」という質問に
対して適切な答えが出せない。要は、未来がわかって
いても適切に対処できないのであれば、不確実な未来
になんかなおさら対応できるはずもない。


例えば、プレステの場合なんかであれば、例えば、5年
前にさかのぼって「5年後に任天堂wiiとDSで大ヒッ
トを飛ばしています。あなたならどうしますか?」と
なれば、自ずと任天堂よりも先にそういうコンセプト
の商品を市場に出すという選択肢をとることができる。


では、なぜその商品はそれができないか。それは、代
替品が多すぎる、というのがその根本にあるのだと思
う。要は想定していたよりも台数が出なかったという
のであれば、その減少した分のお客さんはその「用事
」を済ますために別の手段を選んだことになる。例え
ば洗濯機であれば、日立の洗濯機が売れなくなった、
代わりにパナソニックのななめドラムが大ヒットとい
う図式が成り立つわけだ。任天堂の例は「非消費者」
層にアプローチしたという点でちょっと違うが、それ
でもプレステの想定していたお客さんは任天堂に流れ
た、と考えることもできる。要はそういったところで
は比較的競合が明らかなのだ。


しかし、今回取り上げている商品に関しては、それが
わからない。売上げはガクンと落ちたのだが、その落
ちた分のお客さんがどこにいったのか、というのがわ
からないのだ。


それの根本は代替品が多様すぎるというところになる
。異業種格闘技が激しい分野という言い方もできるだ
ろう。つまり、家で映像を見るという用事に対しての
手段としては基本的にテレビしかない。一部、プロジ
ェクタとかケータイワンセグとかPCテレビとかはある
が...。でも、その商品の「用事」を済まそうという
のであれば、それこそサービスもあるし、商品もある
し、そもそも買わずとも済ますことができるのだ。


では、これと同じ性質をもったものが他にあるだろう
か。それは玩具・エンターテイメントではないだろう
か。これらなんかははっきり言ってしまえば必需品な
んかではない。要はなくても対して困らないし、あっ
たからとって何かの生産性が劇的に上がるものでもな
い。だから次々にアイデアを出してそれらを商品にし
てそれらはどんなにヒットを出しても一過性で終わる
というビジネスの元で成り立っているのだ。


たしかにその商品に限れば、生産性の向上というベネ
フィットがあったから売れたといえる。でも、同時に
製品分野のアーキテクチャとしては玩具・エンターテ
イメントと同じ部類に入るもの、と考えたほうが説明
がつくと思う。


では、どうするか。今の事業部はそれを知ってか、知
らずか、一過性でも売れればいいという方向で商品開
発を進めようとしている。アーキテクチャの考えに基
づけば正しいのかもしれない。でも、製品特性として
玩具・エンターテイメントと同じかといえば、そうい
うわけでもないのだ。だから、僕としては、そうした
製品特性の条件(これはぼんやりしているが)を満たし
た上で、同時に一過性のビジネスモデルでも成り立つ
ものを開発すればいい、というビジョンを持つべきだ
と思っている。残念ながら具体的な案がないところが
難しいところなのだ。






ちなみに今日はひさしぶりにGさんとOさんとよく話し
た。Oさんに言いたかったのは、「やりたいから」で
もいいけど、せっかくやったその「やりたいこと」を
価値に結びつけられるような考え方をもってほしいと
いうことだったのだ。