MBA帰りのKさん

ケンブリッジ大学に1年間留学MBA留学をしていたKさん
と飲みにいってきた。


会社派遣で行ってきたのだが、その派遣までのプロセ
スから向こうでの授業の進み方などいろいろと話を聞
くことができた。


基本的にケンブリッジではparticipationは評価ポイ
ントにはならず、レポートと試験が採点基準になると
いう。そうしているのは、participationが評価対象
になってしまうと、それこそ、中身のない発言など
が増えてしまい、授業が収集つかなくなることを避け
るためだという。そこが米国系のMBAとの違いのよう
だ。


さて、授業は基本的にはケースをベースに行われると
いう事前にケースを読んでそれに対して授業で発言す
るというものだ。最低求められるのは、そのケースか
ら読み取れることをベースに話すこと、さらに求めら
れるのはそこからいかにオリジナリティを出せるか、
ということだ。例えば、まさにその経験があった場合
なんかはそれがその人の付加価値になる部分でもあっ
たりする。


でも、どうにも腑に落ちないのは、2点ある。


1点目は、既に起こった過去に対して議論を行うことだ
。例えば、iモードでは、たしかサービスを開始したの
は1999年ぐらいだったと思う。「1998年の時点で携帯
電話の未来を考え、どんな戦略をとりますか?」とな
るわけだが、要はiモードというのは既に現実として、
大ヒットしているわけだ。自分では決してそういう意
思決定をできないと判断し、「ケータイでインターネ
ットは儲からない」などと言ったところで、「模範で
はないが、結果的にiモードというサービスを開始し、
高校生を中心に大ヒットして...」みたいなことを言わ
れるかと思うといまいち納得がいかない。
さらにはコブラビールの話なんかもそう思った。イン
ド料理をチャネルとして人気だったが、コンシューマ
市場にも参入すべきだろうか...みたいなケースがある
。それにしても、今現在、普通にスーパーでコブラ
ールは売られていて普通に人気があるわけだ。要は、
未来を知っているのにも関わらず、意思決定をしろと
言われてもいまいちピンとこない。どうしてもバイア
スはかかるはずだ。Kさんはそれを、自分がそれを知ら
ないと思ってやらないと意味はない、といっていたが
現実としてはおかしな話だ。


そういう意味でいうと、大前研一氏が主催するビジネ
ススクールなんかでは、今現在起こっている問題に対
して、「あなたが三菱自動車の社長だったらこの後、
どういう打ち手をとるか?」ということを議論するこ
とはすごく意味があるように思う。それこそ、ディス
カッションする能力が高まるだろうし、現実問題に対
する関心も自ずと高まるように思う。


まぁ、それらも使い方次第だとは思うが。


2点目は、知りもしない企業のケースにどれだけ意味が
あるかだ。たしかに経営者というのは少ない情報の中
でいかに精度の高い意思決定をするかが求められる。
でも、だからといって飲んだこともないビールの次の
戦略はフレーバー性を高めて...なんていうのは机上の
空論も甚だしいしいように思う。さらには、よりフレ
ッシュさに磨きをかけて...とか、コクを出して...な
んていうのも。
ヘンリー・ミンツバーグ氏の「MBAが会社を滅ぼす」の
中にあった事例として、ハーバード大学のビジネスス
クールでパナソニックのケースが出たときに、ある生
徒は「僕はパナソニックという会社なんて知らないし
、ましてやそこの商品も使ったことがない。それにも
関わらず意思決定をしろ、なんて言われてもアホらし
くてできない。」と言って、学校をやめてしまったと
いう。僕自身もどちらかというとそれに近い感覚を持
っている。


そう考えると、ミンツバーグ氏が唱えるようなMBA(!?)
のあり方が一つの解のように思えてくる。自社の少人
数のメンバーが定期的に集まり、そこでレクチャーを
受け、それをもとにディスカッションをしていくとい
うものだ。要はビジネスとして体系的に学べるものを
学ぶと同時にそれを同じ会社でバックグランドを共有
している者がディスカッションをする、というもので
ある。(たしか、こんな内容だったと思う。)


要は今自分が直面しているビジネスの課題をベースに
それを共有しながら、知識を習得することで、経験と
よりリンクをしながら学べ、かつ実践に応用できると
いうメリットがあるのだと思う。


まぁ、KさんもいうようにMBAは万能ではない。要はそ
れでもその中でいかに意思決定のトレーニングができ
るかが重要なんだと思う。ただし、結局、それはバー
チャルなトレーニングにすぎず実践の意思決定には遠
く及ばないことも同時に認識しなければならない。


Kさんが、帰ってからのやりたいこととして、やはり
オープンイノベーションだ、みたいなことを行って
いた。そのためには海外市場が...といっていたが、
どうにもあまり納得はいかなかったなぁ。