鋳物工場と旅行会社とKRP

今日は、中小企業診断士を中心とした方々の勉強会に
参加させていただき、鋳物工場を見学させていただい
た。というわけで、今日のトピックは3つ。


(1) 鋳物工場
そこはまさしく町の工場というような感じの鋳物工場
で従業員は10名弱といったところだろうか。工場内は
狭く、奥に金属を溶かす炉があり、そこで溶けた金属
を砂で出来た型に流し込むということを生業としてい
る。それにしても危険だ。そのへんに、道具やらゴミ
やらが転がっており、つまずく可能性がかなりある。
そんな状況で、溶けた金属をナベに入れて運んだり、
火花を出しながら型に流し込んだりしているのだ。う
ちの会社だったら完全にアウトだなぁ。それと、実際
に作業もやらせてもらったのだが、あまりここでしか
できない技能がある、という印象は受けなかった。そ
れなのになぜやっていけるのだろう、というのは自然
と起こる疑問だ。どうやらそれは基本的に軍用船の部
品を作っている、というところにある。軍用船という
のは1回航海に出て、そこからもどってくると、それ
でもう部品を交換するのだという。だから、定期的に
需要が生じるのだ。そういう仕事をとってきているか
ら、基本的には仕事がなくなる、ということがあまり
ないのだという。ただやはり防衛費が削られたりする
とそういう影響を受けなくもない、ということだった
。それを聞くと技術というよりは、そういう確実なル
ートをもっている、というのがある種KFSのような気
がしたのだ。


(2) 某旅行会社
そして、その後は、その勉強会に連れて行ってくれた
Sさんにいろいろと話を聞くことができた。Sさんは大
学卒業後、HISに就職したのだが、やめていろいろあっ
て今はKRPで働いている。そんなわけでまずは某旅行会
社の話。


その某旅行会社では基本的にはどれだけの件数を達成
したかが評価の全てであり、お客さんがどれだけ満足
したかなんかは関係ないという。例えば、お客さんが
カトマンズ経由でインドも回って帰ってきたい、なん
て言ったときに、「例えば、タイまでの航空券を買っ
て、そこからカオサン通りカトマンズまでの片道を
買って...」なんてことをやって3時間かけてチケット
を買ってもらうよりも、「カトマンズ行きないですね
」といって断ってしまい、さっさと次の問合せの「グ
アムツアー」とかに対応して数をこなしたほうが評価
が高いんだという。だからどんなにお客さんのために
いろいろと提案したところで、喜ばれようともさっさ
と数をこなすほうが、よいというカルチャーなのだと
いう。


でも、それはやはりビジネスモデルにしばられている
こともあり、大手旅行会社の場合は、航空会社に毎回
○枚売るということをコミットすることで、キャンセ
ル待ちのような状態でも優先的にチケットを確保する
ことができるし、安く仕入れることができるのだ。で
も、それを実現するためには繁忙期でなくともコミッ
トを達成しなければいけない。だから、売らないとい
けないのだ。だからビジネスモデルを考えれば理にか
なったやり方なのだ。要はそれをもって、お客さんに
対して他で確保できなくてもそこでは確保できますよ
、ということができるし、だからこそ格安でお客さん
にチケットをお売りすることができるというベネフィ
ットを生み出しているのだ。


だから、1人1人にベストな提案をしてお客さんに喜ん
でもらいたい、というのと、格安&無理な要望にも応え
る、というのはある種トレードオフのような感じにな
っているのが現状のようだ。


でも、創業者がその会社を創業したときはそうじゃな
かったように思う。どうやったら安く海外にいけるか
、という工夫をした結果、日本からサンフランシスコ
に直接行くのではなく、サンノゼに行ってそこから車
で行けばいい、という視点に立てたんだと思う。だか
ら、本来であれば、杓子定規に安いチケットを大量購
入、大量販売するのではなく、そうしなくても安くい
けるんだよ、というところに、「ほら、こんな方法も
あるでしょ」というのがその会社の原点だったような
気がしてならない。会社が成長するというのはある種
進化することだから仕方ないことなのこもしれないが



もう一つその会社について聞いたのは創業して20年近
くたつがいまだに定年退職者がいない、ということだ
。つまり何を意味するかというと、上のポストが詰ま
っている状態だという。だから新しい人がどんなに上
までいってもせいぜい支店長よりちょっと上ぐらいだ
という。それだとやはりモチベーションの維持という
のは難しい。例え、ベンチャーであっても適度な新陳
代謝は必要なはずだ。


(3) KRP
さて最後にKRPについてだ。KRP自体僕は自治体が運営
しているものだと思っていたが、実は大阪ガスの子会
社として事業を行っている民間企業なのだ。そこにま
ず驚いた。そしてその収益源は、不動産賃貸料がやは
りメインだという。そのためにはどうすればいいかと
いうと、やっぱり人が集まってきてくれるのが、KSF
なのだ。


そのために何が必要かという点で、僕はやはりインフ
ラが整っていたり、研究しやすい環境があったりとか
そういうところが付加価値になるんだろうかと思った
のだが、必ずしもそうではないということだ。


要は「KRPにいったら何か面白いことがありそう」とい
う期待感が人を呼び寄せているのだという。だから、
定期的にイベントを開いたり、講演があったり、学会
があったりなどそういうのが一つの呼び水となってい
るようだ。そして、もう一つ、入居企業が新たな入居
企業を呼んできてくれたりするのだという。今はそう
い仕組みが好循環でまわっているから民間企業として
やっていけているのだという。


一方でその他の集積地帯というのは「けいはんな」に
しても「彩都」にしてもうまくいっていないのが現状
だ。それらは自治体が箱物だけを作って、結局具体的
に何をしたいのか、というのがない。箱物さえ作れば
勝手に人が集まるだろう、という安易なお役所考えな
のかもしれないが。土地があるからといって、箱物を
作ったからといって、ベネフィットがなければ人は集
まらない。京都なんかはやはりアクセスがいいし、大
学も近くにたくさんあるし、という立地上のベネフィ
ットもあって、かつ努力をしているからこそ成り立っ
ているのだ。


そんなKRPだが、入居企業の業種などは特に決めずにや
っているという。そこは市場の原理にまかせて、その
ときの時流にのった企業が入ってくればいいという考
えだ。それと、あえて業界をコントロールしてしまう
と、リスクヘッジもできなくなってしまうというのも
ある。その業界がダメになったら入居者もいなくなっ
てしまう、というのであれば事業が成り立たなくなっ
てしまうわけだ。


さてもう1つ関西には神戸に医療産業都市というのがあ
る。要は先端のバイオなどの研究開発に特化した企業
や大学、研究機関を集めたクラスターを目指している。
ここは自治体を中心にやっているようだ。


そういう意味でいうと、KRPは総合大学で神戸は特化型
大学、というふうにいえるように思う。総合大学であ
れば、「あれもあるし、これもあるし、なんか面白そ
うなことがおきそうじゃん」というような感じだ。一
方で特化型であれば、「○○についてならそこに行け
ばいい」という認識をしてもらえるかどうかがキーと
なる。つまりは、そこで世界最先端のことが行われてい
るのであれば自ずとそこに人は集まってくるというわけ
だ。それこそ、立地の不便性などがネックになろうが、
それを超える何かがあればいいという考え方だ。


そう考えると、KRPがこれから海外進出していこう、と
いうのがやはり一つの大きな課題になるだろうなぁ。


でも、大阪がガスがすごいのが別途、東京・名古屋・
大阪でMOTスクールも行っている。今はまだリンクはし
てないと思うが、研究開発型の場所があり、研究開発
型経営のスクールがあり、という状態だ。もともとの
オリジンは異なってもそうした部分ではシナジーが生
みだせそうな気がするなぁ。