ニッチ戦略と規模の経済

シャープが液晶の工場を堺市に建てて、パナソニック
はプラズマの向上を尼崎に、液晶の工場を姫路に建て
ている。これら設備投資は全て、規模の経済に従って
いる。数量を作ればその分コストは下がり、価格が下
がる。それに追従できないメーカーは振り落とされる
仕組みだ。


これは、それだけの市場の規模と市場成長があって始
めて成り立つ戦略だといえる。


一方で、自社の場合は、ニッチ戦略をとろうとしてい
る。小さな市場でもそれを多くおさえればいい、とい
うそういう考え方だ。そういう市場の場合は、規模の
経済で勝とうとするのは難しい。つまり、コスト勝負
になったときに設備投資をしてコストを下げていくと
いう手段がとりにくい。そうなると、人件費を下げる
しかなくなってくる。海外に工場を移して安い人件費
で製造して...となる。でも、そもそもそういう他社
が価格勝負で参入してきたらどうなるだろうか。ここ
がニッチ戦略の難しいところだ。


ニッチ戦略といえども、究極的には、差別化戦略かコ
スト戦略のどちらかになる。こうなると、やはり差別
化戦略でどうにかするしかないはずだ。差別化の仕方
は機能だけに限らず、営業ルートやサービス、ブラン
ドなどいろいろと手段はあるが。何が言いたいかとい
うとそういう意識を持っているかどうか、という点が
重要だということだ。要はそれを認識していなければ
とにかくコストを下げろ、コストを下げる、という指
示になる。でも、コスト勝負となったときに勝負しき
れるだけの体力があるかどうかなのだ。そこでメジャ
ーな企業が勝負しようとすれば、それこそ設備投資を
して規模の経済で勝っていくしかない。でも、それだ
けの市場がない、という状況をどうするかなのだ。


なぜ自分がこんなふうに思うかといえば、とある製品
をバラバラにして他社の同等製品と部品レベルからコ
スト比較を行った事例がある。その際に、部品レベル
のコストではほとんど差はない、むしろ自社のほうが
ライバルよりもコストは安い、という結論だった。そ
れにも関わらず、販売価格は倍近く変わる。要は流通
ルートの問題なのだ。つまり、それでもコストを下げ
ろ、というのはわかるのだが、コスト競争自体もマク
ロな視点で考え、どれだけそこに寄与できるのか、ま
た市場としてみたときにどれだけ変わるのか、という
ことを考えないといけないと思う。