ケーススタディ

会社でクリティカルシンキングの研修があるのだが、
その予習を行った。


何個かのケースを考えるのだが、どうも自分はあまり
この手のケースが面白くない。限られた情報の中で、
答えありきの問題を解いているような気がしてならな
いからだ。


さらには、捉え方によってなんとでも捉えられるのに
も関わらず、「この場合は必ずしも正しいわけではな
いですが、これが模範解答です。」みたいになってし
まうことだ。


例えば、スタバの日本進出のケースをやるとしよう。
結果は、日本に進出して大成功となるわけだから、与
えられたデータから、「日本には立ち飲みコーヒーの
文化があるので参入しやすい、日本の市場は伸びてい
る、高価格帯コーヒーで差別化できる、→だから参入
しましょう」みたいになるだろう。


でも、同じデータから、「日本人は高価格コーヒーを
受け入れにくい、市場は成熟しかけている、基本的に
は緑茶の文化、→参入を見送る」なんてこともいえる
わけだ。


もちろん、ケースのメリットはその状況でその経営者
がどういう意思決定をしたのかをトレースすることに
意味がある、といえばそうなのだが、見たことも聞い
たこともない企業の判断をたかだか数ページのデータ
を見ただけで判断できるかといえばそんなことは自分
にはできないと思う。コンサルタントなんかは限られ
たデータの中で意思決定をしなければデータに埋もれ
るだけだ、なんていうか、例えば、スタバの例にして
もコーヒーが高品質がどうかなんて飲んでみなければ
わからないと思う。仮に、別の企業がスタバよりおい
しいコーヒーで差別化する戦略なんてケースがあった
として、それがどんだけおいしいかなんて資料上から
はわからない。だから、スタバのケースにしても、
自分がスタバを利用したことがあるから味にしろ、雰
囲気にしろわかるが、本当の意思決定というのは、そ
んなのは全く分からない状態でするわけだ。だから、
そのときに実際に飲んでみて、「これはいける」とか
「これはいけない」となるわけだ。だから、クリスピ
ークリームドーナツなんかも、データだけ見れば、す
でに飽和した飲食業で差別化のとぼしいドーナツ事業
なんかは進出しても仕方ない、という結果になってし
まう。最後の意思決定のポイントはこういうところに
なる。


だから、フレームワークの分析にしてもそうしたもの
はコンセプトの実現性判断や戦略の落とし込みには役
立つもののコンセプト自体の決定的な判断材料にはな
りえないと思う。


だから自分が思うのは、既に起きた過去の分析をする
のではなく、未来が確定しないことをどう分析するの
かのほうが大切だと思う。だからその時点でどういう
分析をし、それが結果としてどうなったのかを考えて
はじめて「考えた」といえるのではないだろうか。そ
ういう意味で、ビジネス経験というのは非常に重要だ
。自分で経験したことっていうのはまさにそういうこ
となのだから。でも、これも意識しなければ、つまり
は未来がどうなるかを考えずになんとなく経験を積ん
でいるかぎりはなんの足しにもならないということだ
と思う。だから、周りの人間がどういう意思決定を行
っているかを見て、自分ならどうするかを考え、そし
てそれが結果としてどうなったかを見る、ということ
こそがもっとも自分を鍛える手段のような気がする。


だから、MBAをとることが勝ち組になるための一つの
切符のように言われているが、本当にすごい人、とい
うのは必ずしもMBAなんかは持っていない。それはそ
の人が自分の経験に根ざしたそういう仕事の仕方をし
てきたからではないだろうか。


ただ、僕自身がMBAをもっているわけではないので、
それ自体をどうこういうのはまた違う話だ。