メディチインパクト

メディチインパクト」という本を読んだ。一言で言
えば、「新しい概念を生み出すために何をすべきかを
具体的に示した本」ということができる。イノベーシ
ョンを起こす人がどういう思考をし、どういう行動を
とっているか、というのをまとめたようなものなのだ
が、たんに天才はこうやってイノベーションを起こし
ているんだ、という内容ではなく、実際に読者がどう
行動していけばよいのかも示している。


大きなポイントは下記の3つである。
(1) 交差点
(2) アイデアの量
(3) アイデアの実行(失敗をする)



(1) 交差点
交差点とは、異なる文化、領域、学問が一ヶ所に収斂
する場所だ。つまり異なる分野が出会う場所である。
単順に考えれば、分野内でのアイデアの組み合わせと
分野間でのアイデアの組み合わせの数には全然変わる
。例えば、ロック音楽の組み合わせが2400として、ク
ラシック音楽の組み合わせも2400とした場合、専門家
はその中の組み合わせでしかアイデアはでてこない。
でも、交差点に身をおくことで、そのアイデアの数は
2400x2400=5760000通りとなる。それだけの組み合わせ
があれば意外性のあるアイデアが生まれてくる。これ
が交差点の効果
だ。
また、この交差点においては連想のバリアを壊すこと
が必要だ。文化はルールと伝統によって規定されるの
だが、専門家は自分がもっと慣れ親しんだ領域へと直
行するが、交差点ではあえてその連想バリアを壊さな
ければならない。そのためには、さまざまな文化に触
れた経験、既成の教育にはない学び方、思い込みを逆
転する、違う視点に立って物事を見る、こういったこ
とが必要になる。
また、タイトルでメディチインパクトとあるが、これ
ルネサンス時代のヨーロッパのメディチ家をさして
いる。その当時メディチ家が芸術家や技術家などを多
数囲い、彼らが相互に交わりながら自由に創作できる
環境を作ったからこそそれまでにはなかったまったく
新しいルネサンスという文化を生み出すことができた
。つまり、文化の交流点それが、イノベーションの鍵
だという意味をこめてメディチインパクトというタイ
トルにもなっているのだ。



(2) アイデアの数
イデアの質ともっとも強力な相関関係にあるのは、
イデアの量でえある。ピカソは2万点の作品を創作し
アインシュタインは240本の論文をかいた。エジソン
は1039件の特許を申請している。つまり交差点に身を
おくひとは多くのアイデアのなかからもっとも望まし
いものを探しだすことができる。
また、アイデアの量を出す上でブレストが用いられる
がその問題点についての記載もあった。ブレストは一
般的に成果をあげるのはむずかしいと研究者の間では
いわれている。それはブレストでは誰もがブレストを
やっている気になってしまうからだ。つまり参加者が
真剣に考えようとせず他人のアイデアに依存しようと
すること。これは出されたアイデアが最終的に誰のも
のともみなされないことにある。また、自分が発表し
ようとした際に他人の発言にブロックされることがあ
る。それによってせっかく浮かんだアイデアを発表で
きずに忘れてしまうことがある。



(3) アイデアの実行
失敗に終わるアイデアを試みるなかから、失敗しない
イデアを発見する。また、思考錯誤のためのリソー
スを残しておく。そして最後がモチベーション保つこ
とだ。もうひとつ面白いと思ったのが、このモチベー
ションについてだ。ある活動は別の活動の報奨だと知
らせるだけで、活動の創造性は低下する可能性がある
という。ひらたくいうと、「金はあるに越したことは
ない。でも、何かを創り出すためには、金のことをあ
まり考えないのが一番だ。金は創造的プロセスを停止
させてしまう」。インセンティブはある職務に候補者
を惹きつけるのには有効だが、いったん仕事が始まる
と、ほとんどその意味はなくなる。業績をあげようと
いう意欲は外的なインセンティブでなく、内なる動機
づけから生まれる。いい仕事がしたいという願望、そ
れに尽きるのだという。一方で、「明白な」報奨は内
因性モチベーションにとって逆効果だが、能力の証と
しての報い学習経験の一部としての見返りはきわめて
効果的であるという。要は「認める」ことはインセン
ティブにかかわらず必要だということだと思う。



さて、具体的な行動に落とし込める考え方としてはこ
れらが役に立つだろう。


・専門バカにならない
イノベーションをやってのけるのは、独学で専門知識
を身につけた人が多い。自分で自分を徹底して鍛え、
そそいて幅広い知識を持っていること、ある分野をき
わめると、別の分野へも手を伸ばす。要は既成の教育
にはない学び方をする人とは、独学で幅広く学ぶ人の
こと。
・思考パターンを逆転させる
「メニューのないレストラン」「料理がただのレスト
ラン」、それを実現させるためにはどうしたらいいか
を考える。
・アイデアは書き留めるか図にしておく
今まで思いついたアイデアについて頻繁に考えること
が可能になる。
・とにかく質問し続ける。
聞きまくるうちにそのうち何かものになりそうなこと
が見つかる。



まとめてみると、交差点に身を置き、そこでたくさん
イデアを出して、たくさん失敗をする、そうすれば
イノベーションを起こせる可能性は高まる、というこ
とだと思う。


## それにしても、「わたしはあなたと違う」か...。