結果とプロセス
野村克也氏は「私の履歴書」の中で、こう書いている。
私は優勝することだけが監督の仕事ではないと思ってい
る。「プロ野球の世界は結果がすべて」という人もいる
が、結果だけを重視すると、どうしても目先のことだけ
にこだわってしまう。大事なのはプロセスである。
また、イチローも本の中で、こう書いている。
プロとしてなにを見せないといけないか、自分自身がな
にをしたいかということを忘れずにやらなくてはいけな
い。今シーズンここまできて思うのは、プロとして勝つ
だけが目的ではない。これだけ負けたチームにいながら
最終的にこんなすばらしい環境の中で野球をやれている
ということは、勝つことだけが目的の選手だったら不可
能だと思うんですよね。
いずれも目先の結果にとらわれずプロセスにおいて全力
を尽くすこと。また、意図しない結果で喜ぶのではなな
く、自分が意図したかどうかを重視することでそれが成
長につながること、ということを考えなければならない
。
これは自分でも納得のいくものだし、実践してきたつも
りでいた。
でも、ふとそうではないことに気付いた。自分は徹底的
に結果を求めていた。
自分がずっと考えていたのは「商品化して売れること」
ただそれだけだ。でも、これはある意味結果を求めるこ
とに捉われ続けていたと考えてよいと思う。
僕はそういう考え方でいたから、その目標から外れるよ
うな仕様決めや開発体制には徹底的に反発した。さらに
はそうした態度の自分は正しいと思い込んでいた。
それに対してFさんは、「売れるか売れないかの責任は
上司が考えること、君は自分のスキルを伸ばすことに専
念しなさい。」ということを言っていた。
僕はそれに対して、売れないと思うものに没頭はできな
いし、没頭した経験の中でこそスキルは培われると考え
ていた。だから、自分の手を汚さず、外に投げたりして
もそれが結果へ到達する最短の道と思えばそれでいいと
思っていた。
でも、やっぱりそれは「結果」しか見てなかったという
ことなんだと思う。そして、Fさんはプロセスというも
のの重要性を僕に伝えようとしてくれていたんだと思う
。
昨日、SにFさんが僕のことをこんなふうに言ってたとい
うのを話してくれた。Fさんは「あいつは、事業部に行
って自分の手を汚さずに外にばかり投げているんじゃな
いだろうか。もし、そうだとしたら何にもスキルが身に
つかない。回路を動かしたりそういうことをやる中でも
発見はあるんだ。」と言っていたという。
プロセスと結果、僕にはまだまだ見えていないものばか
りだ。
ちなみに心に引っかかっているのが、Fさんが若い頃、
はんだごてを家に持って帰っていた、という話だ。Fさ
んでもそういうことをしていたからこそ今があるんだろ
うと思う。