Sさんのテーマ

いよいよSさんのテーマが正念場を迎えた。調査のため
に試作機器を海外に持っていこうとしていたが、副社
長から「これ以上やるなら試作器ではなくて商品とし
て持っていって確認しなさい。だから、後は事業部と
整合してください。つまりこれ以上研究テーマとして
お金はでません。」というディシジョンが下された。


事実上、事業部がやる気はないため、これ以上進めよ
うがなくなってしまったわけだ。この先どうする!?




でも、Sさん自身は遅かれ早かれこうなることは自分
でもわかっていたのではないだろうか。それでも、こ
れをやりながら次のネタを探そうとしていた、という
ところだと思う。ただそうこうしているうちに1年以
上たち、ネタは見つからず、今のテーマでも引っ張り
続けられなくなったというところだろうか。


僕自身が言うのはおこがましいことだが、Sさんがどこ
で道を間違えたかと考えれば、それはコンサルを使っ
たことだと思う。コンサルなんてお金さえ使えば誰で
も頼むことはできる。でも頼むことができることと、
そこからアウトプットを得られることは違うのだ。Sさ
んは明らかに「なんか出てくるだろう」という考えで
コンサルを使っていた。別にコンサルタントを使うこ
と自体は間違いではないが、やはり使い方があると思
う。僕自身はそれは以下の3つだと思う。


(1) 自分の仮説が正しいかを確認する
(2) 自分の仮説が失敗するシミュレーションをする
(3) あるべき姿を出させる


Sさんの場合はそのどれもなかったといえる。「コンサ
ルタントに頼めばなんか出てくるだろう」というアプ
ローチでもし本当に何か出てくるならば、それこそお
金で何でもネタが出てくる、ということになる。でも
実際はそんなわけではない。それをわからなかったこ
とと、そして、そういうアプローチに頼ろうとしたこ
とが僕としては一つの失敗だったのではないだろうか
、と考えている。




また、Sさんを見ていて、中小企業みたいだな、と思っ
た。(実際、中小企業を知っているわけではないが。)
SさんにはSさんを信じている3人の部下がいて、3人が
3人とも「Sさんがうまくいかないのは周りが邪魔をす
るからだし、周りがSさんをわかっていないからだ」と
いっている。
でも、そうはいっても本当に今のテーマがなくなって
しまったら彼ら3人(実質2名)は仕事がなくなってしま
う。
結局、中小企業の社長が「もううちには仕事がない」
となってしまったら、従業員には「よそで働いてくだ
さい」というしかない。テーマリーダーがテーマを生
み出せないというのはこういうことと同じことなんだ
と思う。傍からみていてそう見える。


でも、僕自身明日は我が身だ。