中村俊輔「察知力」

中村俊輔選手の「察知力」を読んだ。自分がサッカーを
していることもあり、すごくシンクロしながら自分自身
をを振り返ることができた。


中村選手については、そのプレースタイルやあまり闘志
を前面に出さない姿勢から、正直、天才肌の選手と思っ
ていた。でも、結局それもマスコミから作られた印象に
過ぎなかった。この本を読み、彼が誰よりも謙虚にサッ
カーに向き合い、そしてサッカーに夢中になっているこ
とが伝わった。まぎれもなくかれはプロフェッショナル
だ。


以前、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」におい
て清水商業高校の大瀧監督が、「プロフェッショナルと
は、何かを突き進めていっても、まだやり方が何かある
のではないかなと。もっといいものがあるのではないか
なという求めていく欲みたいなものを持っているという
ことだと思う。」と言っていたが、まさしく中村選手は
それを体言しているといえる。


以下、本を読んで感じたことだ。


(1) 夢中
以前、中村選手が高校生の頃、髪を自分で切っていた、
というエピソードを聞いたことがあった。ただ、そのと
きは「変わり者だなぁ」と思っただけであった。でも、
彼にとってはそれは変わったことでも何でもなかったの
だ。髪を切っている暇があったら、その時間もサッカー
のことを考えていたかっただけだったのだ。もちろん、
サッカーが好きだったというのもあったが、うまくなる
ためには他のことなんかしている余裕はなかったと言っ
ている。
まさに、これがプロフェッショナルになれるかどうか、
だと思った。
僕は自分がプロになれるまで成長できなかったのは、ず
っと中学生の頃に自主練をする環境になかったから、と
いうのを心の中の言い訳にしていた。でも、それって、
結局自分がうまくなれないのを「学校の都合で自主練を
禁止されていた」という外の環境のせいにしていただけ
だった。
つまるところ、夢中になりきれなかった、だけだった。
それだけだ。
それでも、高校生の頃は、誰よりも遅くまでグランドで
練習をしていた。しかし、友達と遊びに行くこともあれ
ば、服を買いにいくこともあった。そういう誘惑に勝る
ところまで夢中になれなかった、ということだ。別に後
悔しているわけではないが、結局、プロフェッショナル
になるっていうのはそういうことだと思う。起業するに
しても結局どれだけそれに夢中になれるかの問題だ。夢
中になればチャンスも見えるし、課題も見えてくる。で
も、夢中にならなければ何も見えてはこない。「まずは
目の前のことを一生懸命やれ」というのもそういうこと
だと思う。


(2) ヤバイ、ヤバイ
中村選手が初めて日本代表に呼ばれたとき、彼は、「
ヤバイ、ヤバイ、自分のレベルでは周りに迷惑をかけて
しまう。周りが50%でやっていても自分は100%以上でや
らなきゃダメだ。」という思いでプレーしていたとい
う。彼でもそういうふうに思っていたということだ。
自分を考えてみると、結局、自分を成長できたときって
同じように「ヤバイ、ヤバイ」って思っていたときだと
思う。中学1年生のときに試合に出てたとき、そして高
校生のとき、大学のときの授業、大学院のときのクロア
チアでのインターンシップ、そしてアメリカ。いつも、
「ヤバイ、ヤバイ」って思ってた。
そして会社に入ってから...。心から「ヤバイ、ヤバイ
」って思っているだろうか。そうでなければ自分はエッ
ジで踊るどころかエッジにすら立ててないことになる。
今の現状、ある意味「ヤバイ」とは思う。でも、プレッ
シャーに押しつぶされるヤバイとは違う。


(3) くさったらおしまい
中村選手が2002年のワールドカップメンバーから外れた
とき、マスコミは彼がくさることとそしてトルシエ監督
を批判することを期待していた。でも、彼はそういう
は言わなかった。むしろ、自分に足りないものを見つけ
たと感じ、そしてそれを自分の課題としたのだった。決
して監督のせいにせず、自分の問題としたのだ。そして
、彼は監督が誰であってもその要求にこたえられるよう
に引き出しを増やすようにした。
さて、自分自身...。自分が評価をされないということ
は結局は自分に求められているものを満たすスキルがな
いということだ。どんなに「自分が正しい」と言ったと
ころで、結局、それはひとりよがりでしかない。「どこ
でも通用するビジネスパーソン」になるということは、
つまりは、相手が誰であろうと評価される人間になる、
ということではないだろうか。「あの上司はわかってい
ない」なんて言っているうちは、アマチュアの中のアマ
チュア、草サッカーレベルでしかない。


(4) 死生観
彼は「今死んでしまっても、悔いはない」といっている
。決して、ワールドカップに出場し、スコットランド
ーグでMVPをとったりしからではない。彼に達成感はな
い。彼がこういうのは、毎日を100%妥協しないで生きて
いるからだ。
これに関しては自分も同じように感じる。レベルは全然
違う。でも、妥協せずに考え抜くこと、そして自分ので
きることを精一杯やること、そうすることで、いつ死ん
でも後悔ないようしようとは思っている。ただ、まだ全
然そのステージにすら立てていないのも現実だ。もっと
もっと本気になって生き抜かなければいけない。




こんなに自分のことを内省できた本は久しぶりだった。
サッカーを続けてこれたからだと思う。本当に感謝。