マクロな視点の業界の方向性
昨日の大学の授業の際に次のような質問を講師の先生に
してみた。
「基本的に医療機器の薬事が承認されたとしても、結局
売れるかどうか、ということを考えると、保険点数がつ
くかどうかに依存してくると思う。そういう意味で、薬
事承認のハードルと保険点数のハードルはどう違うのか
?」
先生の回答は、薬事の承認と保険点数の付与は、厚生労
働省の局が違うから解釈が変わるということだった。薬
事法改正の際に全て整合をしたはずではあるが、現状と
して、それぞれのケースにおいて基準が変わっていると
いうことだった。だから一概に言うことは難しい、とい
う。
そのときは、なるほど、と思ったのだが、よくよく考え
れば、順番としては「薬事承認→保険点数」という順番
である。問題としてはハードルが「薬事承認<保険点数」
となるケースがあるのか、ということだろう。要は薬事
承認は通ったのに、保険点数は通りません、となるのが
企業としては困るわけである。さらに、薬事承認よりも
保険点数の方がハードルは低いですよ、という場合もほ
とんどないわけである。従って、そうしたケースを帰納
的に把握することで肌感覚で掴めるようになるとは思う
。
また、一方で先生はこういうことも言っていた。「必ず
しも保険点数がビジネスに直結するわけではない。これ
からの方向性としてよりテーラーメイド医療が広がって
いくだろう。つまり、保険点数がつこうがつかまいが、
それが利用されるだけの価値がを有しており、それを使
いたいという人がいるのであれば、自ずとビジネスは成
り立ってはずだ。」
保険点数だけに捉われていた自分、またテーラーメイド
というマクロ環境の変化をまったく感じられていない自
分を認識した...。
たしかに、これからの時代は、国が管理する世の中では
なく、個人がそれを選んでいく世の中になっていくだろ
うと思う。つまり、薬事や保険点数という制度に縛られ
たものではなく、より顧客主義(患者主義)になっていく
ということだ。
これが、混合診療や先進医療といった議論に関わってく
る。今までほとんどこうしたマクロ環境を考えようとし
なかったことは情けない。wikiの混合診療の項目を読む
だけでもだいたいの概略はつかめた。
論点は大きく3つある。それは、医療格差、医療費増大、
安全性、だ。
混合診療の解禁を主張する側は、「解禁すれば保険適用
部分が保険給付の対象となり、患者負担が減る、また、
混合診療の適用により病気が早く直るから医療費は抑え
らえる。そして安全性については、保険適用を待ってい
たら生死に関わる問題はそんな時間は待てない」という
ものだ。
一方で解禁反対派は、「解禁すればお金のある人ない人
で受けられる医療に格差が生じる、また、保険外の治療
を受けられるのは極少数の人間だけだから医療費抑制に
はつながらない、さらに国民は安全性の判断ができない
から安全性を審査し保険適用を進めていくべき」とある
。
なかなか答えの出る問題ではないが、いずれにしても、
世の中の流れとしては、混合診療の解禁もしくは、保険
適用の迅速な審査、となっていくだろうと思われる。
さて、ここで話を自分たちの会社にもどしてみる。その
ときに問題なのか、こうした議論がなされていないとい
うことなのだ。世の中のマクロの動きとか方向性とかを
話し合い、議論することない。要は衆知を集めていない
ということだろうか。仮に計画なんかにあったとしても
どっかのマスコミ情報の焼き増しにすぎない。そんな状
態であるからこうした点を個人が考えようともしないの
だ。自分自身もその一人ではあるのだが。ましてやこう
したcontroversialな問題ほど、「自分たちはどうあり
たいのか」ということを真剣に考えるべきではないだろ
うか。それが根幹にあって初めて一つ一つのアイデアや
テーマの価値観を議論し合えるように思える。
一つ一つのシーズやニーズを大切にすることはもちろん
だが、ときにはこうした大局的な視点で、自分たちの活
動を見直す必要がある。
それと、結局は、保険点数がつかなきゃ売れません、な
んていう商品は本質的にもしかしたら価値がないのかも
しれない。