品質活動のための講演

パラメータ設計を実践していく上で、外部のコンサルタ
ントの方が講演をしてくれたのだが、その様子のDVDを
視聴した。内容はツールのではなく、品質活動を組織に
根付かせるための基本的な考え方についてだ。


以下、概要。。


品質改善活動などを行うのは、だいたいメーカーの売上
高のクレーム比率が1%を超える会社だ。でも、こうした
活動は組織に根付いて日常化されなければ意味がない。
だいたいトップダウンで声を大きくして、品質改善活動
などをやると、クレーム数は下がる。そしてそれをやめ
るとまた上がっていく。今度は名前を変えて品質革新活
動を行う。するとまた下がっていく。それをやめるとま
た上がっていく。今度はスーパー品質革新活動などとな
る...。これではダメだ。1度やったら2度と品質改善活
動なんかしないようにならなければ意味がない。


アセンブリ商品の場合は利益率はだいたい4〜5%。トヨ
タは悪く見積もって7%程度。たいていが日本で組み立て
をするとコストが合わないので中国にいく。中国の人件
費コストがあがると今度は中国の奥地へいく、という。
こうした状態はよくない。仕組みの改善をしないと意味
がない。


人に合わせてルールを作り直す。DRの移行の決済判断が
一番重要。「条件付可」なんていうのはありえない。


(1)仕組み、(2)マネジメント、(3)人材育成、を変えな
ければ品質活動は組織には根付かない。


品質トラブルには(1)設計起因、(2)部品起因、(3)製造
起因がある。


トヨタの場合、部品起因の不良は起こらない。それは
、部品起因によるロス金額は全てサプライヤーが負担
する仕組みとなっているからだ。そうすることでサプ
ライヤーは絶対に不良を出さないようになっている。


また開発でどうにかできるのは設計起因だけである。
部品起因によるものに対して責任を持つ部署が必要で
ある。検査部や調達部などでもよい。


製造ミスしないように設計する必要がある。後から指
摘されても困るので一般的には一発目の試作前にこれ
を行う。


商品開発を短期間で行うことはダメだ。それをするの
であればその分の人をかけるしかない。


品質問題の半分以上は企画の責任。何度も設計変更を
行うことが問題。企画は技術レベルをみて開発できな
いものは開発しない。また、「開発を短くしろ」=「
品質どうでもいい」である。企画は開発部門に「でき
る」と言わせないとダメ。自動車メーカーは企画に2
年の時間をかける。その代わり、後戻りしない。品質
確保できるのは企画段階まで。


企画決定するということは仕様変更がない、というこ
と。企画なんていうのはだいたいが腹を決めるだけの
話。ぎりぎりまで決めることができない。仕様変更が
なければ設計変更もする必要はない。そういう意味で
品質確保の50%は企画なのだ。企画決定は死守、それ
ができなければだめ。そして、企画の決めたQCDを守
るのが開発の責任。量産出図までには製造部門がリス
クがなくなるように設計する。


製造は作りにくくならないようにできるだけ早めに設
計に対してアクションを起こす。後になって文句を言
うのは結局はアクションを起さなかった製造が悪い。


コンサルタントの人の元いた会社では、3000万円以上
のロスを出した人は飛ばされる。それで責任が明確に
なる。その代わり復活のチャンスもある。役割と責任
を明確にし、仕組みに反映させる必要がある。


部品認定のための3点セットは、仕様書、仕様書に基
づいたデータ、サンプル5コである。これがなければ
部品取引はしない。


トラブルが起こったときトヨタは対処療法は認めない
。トラブルがあったということは仕組みに欠陥がある
ということなので、仕組みのどこに問題があり、それ
をどう強化し、どうチェックしたか、までが問われる



DRは0点or100点しかない。条件付可などはありえない
。20個項目があればそれが全て合格になるまで先に進
めてはいけない。決めたことは役員でも守る。


トップに仕様決定の権限はない。役員がマーケなんか
していない。一番知っているのは担当者。役員ができ
ることはマネジメントとレビューだけ。




さて、今回はTさんが自発的にビデオ会を企画した。と
てもよいことだと思う。さらにその後、この講演で聞
いた内容と現状の事業部のギャップの危機感も表明し
ていた。こうした健全な危機感をもつことは非常に重
要だと思う。


願わくば、その後、せっかく30人近く設計者と企画者
が集まっていたのだから納得がいくまでディスカッシ
ョンでもすればよかったと思う。手直しで0:00まで残
っても何も得るものはないが、こういうディスカッシ
ョンのために徹夜をしても、それはきっとよい方向へ
と働くのではないだろうか。さらにはその場にいた責
任者の見解などを聞き、コミットメントをさせてもい
いと思う。それが後にもつながっていくと思う。こう
いう危機感をもつことがボトムアップの改革につなが
っていくのだろう。