サッカーの組織と個人

「チームとしてどう機能するか」というのと「個人をど
う生かすか」というのは、いつの時代でも課題だろう。


トルシエ元代表監督のサッカーは、フラットスリーとい
う組織に対してフィットするという点を条件にして選手
を選出していた。だから、うまいへたというよりは、そ
の役割がこなせるかどうか、というのが課題だった。
このメリットは誰が出てもやることが変わらないのでわ
かりやすい、という点だ。選手のメンバーが入れ替わっ
たとしても役割はいっしょなので、大きく変更はない。
一方で、突出した選手の良さを失わせてしまう可能性は
いなめない。その犠牲となったのが中村俊輔だろう。彼
は左サイドのポジションを与えられたが、その役割を果
たすことができなかった。トルシエが望んだのは、彼が
彼の特徴を出すことよりも、忠実に役割をまっとうする
ことだった。


これと対極に位置するのが、ジーコ元代表監督だ。ジー
コの場合は、簡単に言うと、"うまい選手"を集めて、後
は自分たちで考えなさい、というスタイルだ。これをや
ると、選手は個々人のよさを思う存分出すことができる
。そしてその相乗効果でよいプレーが生み出せるという
ものだ。しかし、条件として、選手は瞬時にお互いのよ
さをお互いに引き出し合う努力ができなくてはならない
。自分のよさだけを出していても、それが他の選手のよ
さにつながらない場合がある。つまり、それだけ選手が
成熟していなければならないのだ。


そして、オシム監督を経て、岡田監督となった日本代表
。結果論だが、ジーコのやり方はまだ日本人には早かっ
たという結論が出されている。今は、このトルシエとジ
ーコの間のバランスをとるようなシステムになっている
といえるだろう。


さて、では、これを自分のチームにあてはめるとどうだ
ろう。一つだけ言えるのは、個人に頼ったチームにして
しまうとその個人がいなくなったときにチームががらっ
と変わってしまう、という点だ。ただし、個々人のレベ
ルの差があるのに、型にはめるのも難しい。


私が思うには、次の通りだ。
・最低限のチームの型は決めよう。
これはみんなが何をしていいかわからなくなるからだ
。これにはうまい選手もそうでない選手も従う。
例えば、FWの守備や少ないボールタッチなどだ。
・それを踏まえた上で個々人の特性を生かす。
例えば、Kはアタッキングゾーンでは仕掛ける。自陣
ではSさんにあまりパスをしない。Kさんがもったら
長いボールが出てくる、etc。


当たり前のことと言えば、当たり前のことだがこれを明
確にしておくのは大切な作業だと思う。