興味を拡散するな
君に忠告します。
君はなにもいわれることはない、と思っているでしょう
。
何も悪いことをした覚えもない、とおもっているでしょ
う。
当たり前じゃないですか、それは。
君は熱心な人であるし、一生懸命に仕事の成績をあげよ
うと努力しています。みんなも十分、それを認めていま
す。もちろん、こういう私だって十分それを承知の上で
言っているのですよ。しからばご忠告というのは、どん
なことでしょうかと、素直な気分になって聞いてくれる
?
それは―――ね、さあね。
あまりたくさんのことに、一度に興味を持ちすぎるなよ
、ということなんです。君のやってること、考えている
ことを察するとね、ついそう言ってみたくなる。
やはり君が当面せねばならぬ職責があるなら、ほかのこ
とをいまあまり考えずに、本務を鋭く追及して余念なか
れといいたい。そして順々にと助言したい。
君が君がいまの仕事の展開について、いろいろ相談して
きてくれたり、苦心している様子を陰ながらも拝見する
と、実に私は頼もしく思うんだが、その同じ君から、あ
まり君が考えなくてもよさそうなことを、しかも熱心に
それを考えている旨を聞かされると、正直なところ、ち
ょっと不安になるんだ。まだ君の若さで、またいまの君
の立場で、そんなことまで考えてくれていると、本筋の
仕事の方の領域で、逆に抜け落ちなどがなければよいが
と案じる。君の愛社心もわかるが・・・・・
頭をおさえる気ですかって?とんでもない。もし、別方
面に本当の適正ありと見るならば、君の上役として自分
は値打があるかどうかは別として、ともかく私がついて
いる。私が見ている。その私は、君をその適正の方へ転
任してもらうことに何の躊躇をするものでもない。
しかし、どうもそのご推挙を申し上げる気の起きるほど
にはならないんです。
こんな事態なんです。素直にいうと。
君、わかってくれますか、私の本当の意中を。
初代社長の本の一端にあった。
本当にこの項目だけ、他とは明らかに口調が違っていた
。そしてまさに自分に向けて書かれていると思った。
「本当の意中」...わかっているかわかっているかどう
か自信はないですが、わかろうとします。