古賀稔彦氏

柔道の古賀稔彦さんの口演があった。非常にゆっくりと大きな声で
小学生にもわかるようなわかりやすさで話してくださった。印象に
残った点を2点。


(1) ソウルオリンピックの敗北
優勝候補として望んだソウルオリンピックで3回戦で敗戦した。そ
れまではみんながチヤホヤしてくれたのに、誰も相手をしてくれ
なくなった。帰国してからは引きこもっていたが、たまたまつけた
TVでオリンピック特集がやっており、そこで自分の試合がうつって
いた。そして負けた後、そこには応援席にいる両親の姿が。古賀さ
んは例え負けても両親だけは自分の姿を見ていてくれていると思っ
ていたという。でも、そこに映っていたのは、試合会場に背を向け
る両親。そして...両親はスタンドに向かって、一生懸命頭を下げ
ていた...。申し訳ないと...。その両親の姿をみて、それまでは、
自分が柔道をやって、自分が成長して、自分でオリンピックに出て
、自分で負けて、と全て自分のことしか考えていた考えが、一新さ
れたという。はじめて人に支えてもらっているということを理解し
たのだ。


(2) バルセロナオリンピックの金メダル
バルセロナオリンピックで金メダルをとってからはみんながチヤホ
ヤしてくれて、どこに行っても、「古賀さん」と声をかけられた。
そんな生活が1年くらいたったとき、むなしさを感じた。それまで
は金メダルだけを目標に頑張ってきたが、目標を達成してしまった
ら、何を頑張っていいのかがわからなくなってしまった。そういう
生活は一見楽しそうだが、少しも充実感を得られていなかったとい
う。そして新たに自分超えという目標を持ち、また頑張りはじめた
という。


何かの雑誌にも書いてあったが、スポーツ選手のコーチがもっとも
難しいと感じるのは金メダルをとらせることではなく、金メダルを
とった選手のモチベーションを維持させること、ということみたい
だ。


(3) 当たり前のことを教える
引退してから柔道教室をはじめた。そこでは当たり前のことを教え
たいという。「大きな声で挨拶をする」「落ちているゴミを拾う」
、誰に聞いてもそれは当たり前だという。でも、周りの大人がそれ
をできていない。だから、当たり前のことを当たり前にできる人を
育てたいというのが古賀さんの思いだ。


古賀さんは失敗と成功の両方から学ぶことができた。しかも、それ
はとびきりでかい失敗ととびきり大きい成功だ。そういう人が話す
とやはり説得力がある。