スウェーデンの国際養子縁組

この前、「日本はスウェーデンになるべきか」という本を読ん
だ。内容自体は、中立的な視点でと最初に書いてはいたが、や
はり分析が少し主観的な見方に偏っている印象を受けた。


その中に興味深い内容があった。それはスウェーデンの国際養
子縁組についてだ。スウェーデンでは、養子縁組によってスウ
ェーデン国籍を得た朝鮮半島出身者が約9000人いる。その
きっかけが1950年代の朝鮮戦争で、そのときに国連軍のス
ウェーデン医療団が孤児を養子として連れ帰ったのである。


スウェーデンは、人口当たりの国際養子縁組数が世界一高いと
いう。50人の子どものうち1人は養子という数だ。2001
年の養子縁組による入国者数は1044名。この背景には、貧
困から子どもを救いたいという善意、人権意識、社会正義の心
があるのであろう、と著者は推測している。スウェーデン政府
の方針は子どもの幸福を第一に考えることとし、本来であれば
実の親の家庭で、そして生まれた祖国で育てられるべきだが、
それがかなわない時の最終手段として、国際養子縁組が慎重に
認められるべきだとしている。外国で幸福になることが難しい
境遇にある子どものみを、スウェーデンが受け入れるのだとい
う原則を強調している。


これは日本にとっても参考になる事例といえる。日本で人口減
が問題として提起されているが、その解決手段は、「子どもを
増やす」、「移民」の2つしかない。子どもを増やす、という
のはそれこそ地道で長い努力が必要で即効性はない。一方、移
民に対しては、治安の悪化などが懸念され、現実的ではない。
そうした現状において、子どもの国際養子縁組というのは、日
本が検討するに値する手段といえる。


もちろん、「人口を増やす」が目的になってはいけない。「
子どもの幸福を第一に考える」という理念があって始めて成り
たつ。


ただ、昔、何かの本で、国家を形作る要素の1つは「言語」
というのを読んだ気がする。それを考えると、養子縁組した
子が、日本という安全な国において、日本で育ち、日本語を
話し、そして日本人として振舞う、というのは素晴らしいこ
とではないだろうか。そうして成長した子どもたちが祖国の
ために国際的に貢献できるとしたら、尊敬に値するのではな
いだろうか。日本だからこそできる国際貢献の1つとも言え
る。


これもすぐにとはいかない。地道で時間がかかることである
。しかも、外務省と厚労省をまたぐような話でもある。でも
、子どもの幸せを考えた日本の貢献という理念があれば、省
庁を越えて実現できるのではないだろうか。