ダイソンのサイクロン方式

先週のイノベーションフォーラムのTom Kelly氏の話の
中でダイソンの話が出てきた。ダイソンについて僕が
思っていたのは、もはや成熟した分野においてよく活
気的なイノベーションを起こせたなぁ、というものだ



掃除機という成熟した分野でもこうした事例があるの
であれば、他の成熟したものについてももっと他のイ
ノベーションが起こりうるのではないか、と思う。
ただ、5127台のプロトタイプを作ったというのだが、
それがどういうプロトタイプか、ということだ。やみ
くもに掃除機の性能向上を目指してプロトタイプを作
っている中で、サイクロン方式に出会ったのか、それ
ともサイクロン方式というコンセプトの元に5127台を
作ったかということだ。要はコンセプトがどう出てき
たのかということにある。


そこで、ダイソンのwebサイトを見てみると、以下のよ
よにその起源について書いてある。


1978年、ジェームズ ダイソンはボールバローの塗装室
内のエアフィルターが、塗料の微粒子によって(ちょ
うど掃除機の紙パックがホコリで目詰まりするように
)頻繁に目詰まりを起こすことに気付きました。そこ
で、ホコリの重量の10万倍以上もの遠心力でホコリの
微粒子を取り除くという、工業用サイクロンタワーを
設計しました。「この原理を掃除機に応用することは
できないだろうか」と考えたダイソンは、開発に取り
かかります。そして、5年の歳月と5,127台の試作品を
経て、ついに世界初の紙パックを使用しない掃除機を
生み出したのです。


つまり、元々工業用のサイクロンタワーという技術が
あり、それが「掃除機」と結びついたところに基本コ
ンセプトが生まれたのである。


そう考えると、掃除機屋さんが掃除機の機能向上を考
えていてもやはりこういう発想には辿りつけないと思
う。重要なのは、そうした交差点においてコンセプト
が起こるということなのだ。例えば、ミキサーのイノ
ベーションを考えたときに、食品を細かく(or液状化)
させることを考えれば、超高圧食品というのも一つの
イデアとして出てくる。でも、それは超高圧技術と
いう技術に出会わない限りは、どんなに机の上で考え
てもコンセプトとしては出てこないだろう。要はコン
セプトの起源にはそうしたメディチインパクト的な交
差点がやっぱり必要になるのだと思う。従って、頑張
れ、頑張れ、でプロトタイプを作り続けてもコンセプ
トがない限りはやっぱり意味がないのではないだろう
か。コンセプトがあって始めてプロトコルがよい方向
へ進んでいるのかどうか、というものが見えてくるは
ずだ。


去年ぐらい、OさんとNさんが、ある製品のプロトタイ
プをまずは作るんだ、といって実際に作っていたが、
結局出来たプロトタイプを誰も評価できなかった。つ
まりコンセプト自体があいまいだからできたものを評
価できなかったのだろう。それをいまさらながらに思
うわけだ。